第81話 ヴィレッチ村

 眩しい日差しが火に枯れ木をくべていた私に降り注ぐ。どうも。足名のの、もとい、シロです。


 見張りは深夜と早朝の二つに別れて行うことになった。で、今日は私が早朝の見張りだ。

 魔物が出てきたらジャックさんを叩き起こさないといけない。怖いね。


 そんなことを考えると、お腹が減ってきた。


「朝ごはんの用意をしないと……。」


 独り言を呟きながら、私はバッグを漁り、保存食と鍋を引っ張り出す。


 やや弱くなった焚き火の上に、水の入った鍋を置く。そして、その鍋の中に乾燥野菜と干し肉を入れ、加熱しながらかき回す。


 胡椒をいれて味を整えたいところだが、この国では胡椒は高級品だ。香り付け程度に銀貨一枚を鍋に入れられるほど私の懐は潤ってはいない。


 代わりとして近くに生えていた野生のハーブを摘んで水洗いしてから鍋に入れる。【植物知識】は本当に便利だと思う。


 割といい匂いがしてきたら、鍋を焚き火から下ろし、木の皿に盛り付ける。ついでに黒パンもその皿に添えて、朝ごはんの完成だ。


「ジャックさんはまだ起こさなくても良いか。さっさと自分の分だけ食べよう。」


 テントの中でもフードを被って眠っているジャックさんをちらりと見てから、私は手を合わせる。


「いただきます。」


 スプーンでスープを一すくい。口に含んでみれば、塩味と乾燥野菜のほんのりとした苦味。その奥に、うっすらと肉の旨味とハーブのぴりりとした辛み。


 次に、黒パンを一口。パサついたパンは口の中の水分を一気に奪う。硬い黒パンをちぎり、スープにつけ一口ずつ胃のなかに入れていく。


「うん。食べられないほどではないけれどまずい。ごちそうさまでした。」


 空っぽになった木の皿を前に、私は手を合わせ言う。今日はまだ始まったばかりだ。



 粗食をとってから数時間後。小さな村についた私とジャックさんは、村の前の立て札をちらりと見る。


『ヴィレッチ村へようこそ!』

「村村って、どういうネーミングセンスなのよ……。」

「……?何言っているんだ?」


 キョトンとするジャックさんに、私は片手をふるい、何でもないと言う。


 村には数軒の建物と畑があるらしい。幾人かの村人が畑仕事をしていた。


 私は、ジャックさんに声をかける。


「ジャックさん、このあとはどうしますか?」

「そうだな……少し早いが、ここの村で一泊してから目的地へいくか。」

「わかりました。交渉してきます。」


 ふかふかオフトゥんで眠りたいからしっかり交渉してくるぞー。


 数時間後。私たちはゴブリン退治に連れていかれた。


「おいシロ。一体どうしてこうなった。」

「しらね。」

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