第82話 ゴブリン退治

「おいシロ。一体、どうしてこうなった。」

「しらね。」


 細い山道を歩いているのは、私、足名ののと、ジャックさん、それに、若い男性の村人が十人。


 さすがにその答えは不味かったのか、ジャックさんがじろりと私の後頭部を睨む。


 えーっと、何でこうなったのだっけ……?


「あ、そうだ。ヴィレッチ村に泊めてもらう条件でゴブリン退治の協力を頼まれたんだった。」


 私がそう答えると、ジャックさんはすごく嫌そうな顔をした。


「無償で依頼を受けるのはどうかと思うぞ。」

「違う違う。私がするのは『協力』であって、『討伐』ではないよ。ついでに、無償というわけでもない。お金はもらわないけれども、無料で宿と食事を提供してもらうわけだから。」

「いろいろ言いたいことはあるが、無償ではないということには納得しよう。だが、『協力』と『討伐』の何が違うんだ?」


 よくわからないという顔をしているジャックさんに、私は道端で摘み取った薬草を見せる。

 【植物知識】によれば、これはHPを若干回復させる効果のある薬草らしい。


「私のアビリティに薬草を識別できるものがあってね。HPを回復できる要員が欲しかったそうよ。戦いをするのは村人たち。」

「……そうか。それだったら俺は一切戦闘しないぞ?」


 手に巻いた包帯を指で撫でながら、ジャックさんは心底面倒くさそうに言う。


「うん。全員すぐに逃げらる用意はしてもらっているからね。なんだったらジャックさんは村にいても良いよ。……印象はすごく悪くなるだろうけど。」

「……わかった。ついていく。お前が怪我をしたら護衛の俺の責任だからな。」


 フードを深くかぶり直したジャックさんが、腕を組みながら私の後ろをついていく。ごめんね。


「シロさん、ジャックさん。そろそろゴブリンの巣につきます。お怪我をしないよう、気を付けてください。」


 先を歩いていた村人が、私達に声をかける。


「……俺は大丈夫だ。」


 ぶっきらぼうに言うジャックさん。だが、組まれていた腕がほどけている。

 その数秒後。私達のに、真っ暗な洞穴が現れた。


「えっ?ちょ、これがゴブリンの巣?」

「おいおいおい……大規模すぎやしないか?」


 思わずポカーンと大口を開けて呟く私とジャックさん。洞窟の入り口は、大人三人が並んで余裕で入れるくらい。入り口に多少の加工の跡がみられ、見張りのゴブリンはいない。


「ジャックさんジャックさん、これ、洞窟のたて幅が可笑しいよね?」


 思わずそう聞いた私に、ジャックさんは大きく頷き洞窟の方を指差す。


「当たり前だ。ゴブリンの身長は110cm前後だ。でかくても150を越えることはまずない。だが、ここの洞窟の高さは250cm。」


 ここの辺りの高い木々でごまかされているが、洞窟の高さが異常だ。加工の跡からして、天井まで加工されているらしい。


「ゴブリン以外にも何かがいる……のでしょうね。」

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