第28話 ローストポーク

 ブモオオオオオオオオオオオ


 凄まじい雄叫びが通路に響き渡る。

 二足歩行の豚のような魔物は、のしのしとこちらへやって来た。


「オーク、キング」

「のの!下がって!」


 あかねちゃんは私にそう言う。

 私ははっとして後衛のポジションに行く……前に。


「あかねちゃん、ちょっとチクッとするからね。」

「へっ?痛っ!」


 あかねちゃんに瞬発力強化薬とHP強化薬の混合薬の注射を打つ。


「前衛の人は瞬発力とHPの強化薬を使って!」


 私はそう言って小さな瓶を配っていく。

 全員に配り終え、私も薬を飲み込み、後衛に戻る。


 ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべるオークキング。

 あかねちゃんは、ダンジョンの床を蹴ると、それに切りかかった。


 ズシュッ

 ぶもぉっ!?


 目にも止まらぬ素早さに、驚きの声を上げるオークキング。刀はオークキングの丸太のような足をえぐる。


 しかし。


「脂肪の層が厚い!部位破壊には至ってはいないわ!!」


 傷口からはほとんど血液が出てきていない。オークキングの表情は、驚きからまた下卑た笑みに戻る。


 ぬらりとオークキングが動き、手に持った大剣を振りかぶる。


 ぶもっ

 ブン!! ズガァン!!


「きゃっ!」

「あかねちゃん!!」


 私の体よりも大きな大剣は、凄まじい音を立てて空を切り、勢い余ってダンジョンの壁にクレーターを作る。

 当たれば体がバラバラになりかねないような一撃に、私はゾッとした。


 次の一撃をオークキングが放とうとしたとき……


 パァン!!


 銃弾がオークキングの腕を撃ち抜く。

 重い刃は軌道が逸れ、ダンジョンの床を砕くだけに留まった。


「宮藤くんナイスアシスト!」

「ジルドレは目玉を狙え!頭や体だと脂肪の層が厚過ぎて効果が薄い!」

「了解。」


 あかねちゃんと立ち位置を変え、剣野くんがオークキングに肉薄する。


「ふっ!!」


 ガキャン!


 足への一撃を、オークキングは大剣で受け止める。


 ぶもぅ!!


「ぐっ、うおぉぉぉぉおおお!!」


 重すぎる剣を、剣野くんは必死にいなす。


 ギャガガガガガッ


 金属の擦れ会う音が響き、力は拮抗した。


 予想外の剣野くんの抵抗に、オークキングに一瞬だけ隙が出来る。

 あかねちゃんは、それを見逃さなかった。


「はぁぁぁぁあああ!!」


 ズシュッ!!

 ぶもおおおお!?


 オークキングが絶叫する。

 最初の一撃をうった場所に、もう一度刃を引いたのだ。アキレス腱のような場所を断ち切られたオークキングは、その場に崩れ落ちるほかなかった。


「二人とも、下がって!【植物召喚】!」


 葵ちゃんがそう叫ぶと、蔦植物を召喚して、オークキングを捕縛する。

 剣野くんとあかねちゃんはオークキングに背を向けずに後退。


 ぶもっ、ぶもおおおおおおぉぉぉ!!


 オークキングの咆哮、そして、ブチブチッという、蔦を引きちぎる音が辺りに響く。


『うっそだろ、おいおい……』


 ロキが顔を真っ青にして呟く。


「散々お膳立てしてもらって悪かったけれども、このバカロキのしでかしたことは、主である私が責任を取るわ。」


 佐藤さんはそう言うと、杖をオークキングに向け、短い詠唱を言う。


「【炎獄】」


 ごおおぉぉぉぉおお!!


 オークキングは、断末魔の悲鳴を上げることも叶わず、無慈悲な炎によってその命を落とした。


[経験値を入手しました]

[レベルが上がりました]


 無機質なアナウンスとわりと美味しそうな匂い、それに、丸焼きになったオークキングの死体を残して、戦闘は終わった。

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