第29話 やれやれだぜ

 オークキングを丸焼きにした私たちは、福島さんに治療をしてもらい、ダンジョンを脱出した。


 治療といっても、あかねちゃんがオークキングの攻撃を避けたときに擦りむいた腕を【ヒール】で治してもらっただけだ。大けががなくて何より。


 ロキは佐藤さんにシメられていた。いいぞ、もっとやれ。


 クリストさんや前田先生に危害が加わるようなことが起きなかったのが幸いだろう。明日、何かが起きる可能性が高くなっただけかもしれないけれども、それについては知らん。


 ダンジョン近くの宿の一室に戻った私は、ステータスを確認する。


 名前 足名 のの

 種族 人間  レベル 12(10up)

 ジョブ 薬師

 HP 85(55up) MP 80(55up)

 筋力 78(55up) 知力 90(55up) 瞬発力 78(55up) 精神力 91(55up)

 アビリティ

 生成(薬品)【8】 薬物知識【4】 精神汚濁耐性【3】 MP軽減(薬品)【3】毒物耐性【1】


「お、レベルが11も上がっている。」


 私は、思わず独り言を言ってしまった。

 オークキングなんて大層な名前をしている割に、レベルが11しか上がらないのかと、少しだけ落ち込んだ。


 後から聞いた話だが、経験値は貢献度で分配量が変わるらしい。薬を渡すだけで11もレベルが上がったということは、かなりすごい敵だったということになる。二度と戦いたくないね。


 宿屋のおいしい晩御飯を食べた後、私たちは自由時間になった。

 大きな露天風呂であかねちゃんと戯れたり、使った分の薬品を生成したりして、ベッドに入った。


 お城のベッド(私の部屋のもの)よりもふかふかなお布団にくるまりながら、私は今日のことを振り返る。


__あかねちゃんの班にいた人、あれ、王女だったよなぁ。なんでいたのだろう。


 ふと、そんなことを一瞬だけ考えたような気もしたが、昨日徹夜したこともあり、瞼はそのまま降りてしまった。







『ケケケっ、ご主人サマ、気分はどうデスか?』

「……何のことかしら。」


 ロキが、佐藤に話しかける。ベッドに横になりながら本を読んでいた佐藤は、顔を上げてロキを見る。


『今日のダンジョン探索で俺様は少しだけ力を取り戻したようで、俺様を使役するのにご主人サマは、ちょっとばかしたくさんのMPが必要となったのデスが、魔力欠乏による頭痛でもおきていまセンか。』

「……オークキングを倒したおかげで、レベルは上がっているわよ?」

『オークキングごときの経験値では賄えない程度には消費量が増えておりマス。』


 ロキはにやにやとしながら佐藤をみる。


『いやー、さすがに元の姿には戻ることはできまセンが、多少は姿を変えられるようになりマシた。』


 ロキはそういって二十センチくらいの大きさからちょうど小学一年生くらいの男の子の姿に変わる。

 ツンツンととがった真っ赤な髪の毛に、くりっとした黒い瞳。肌はプルプルとしていて、頭頂部には小さな角。背中に生えた黒い翼もまだ小さくて、とてもではないが空は飛ぶことはできないだろう。

 服は貴族のような豪華な服の装飾を減らして、子供サイズにしたような見た目で、服に着られているという感じが否めない。


「……ずいぶんと愛らしい姿ね。」

『うるせえ!まだかんぜんにちからをとりもどせていないのデスよ!』


 声変わり前の愛らしい子供の声でロキは佐藤にかみつく。

 佐藤の生暖かい視線に嫌気がさしたのか、ロキは姿を二十センチくらいに戻す。


『で、魔力欠乏はおきていまセンか?MPぎれの魔法使いなんて、歩くカカシ同然デスが、気分はどうデスか?』


 にやにやと笑いながら繰り返し質問するロキに、佐藤はため息をつくと、ステータスをロキに見せる。


 名前 佐藤 夢子

 種族 人間  レベル 53


『………………はっ?』


 ロキは、間抜けな声をだして佐藤の顔を見る。


「……この反応、あなたのせいではないのね。オークキングを倒した後に確認してみたら、こんな感じになっていたのよ。」


 剣野くんに聞いてみたら、レベルは15しか上がらなかった、って言っていたし。佐藤は少しだけ困惑したような声をあげる。


『……オークキングをレベル1の人間が一人で倒したとしても、せいぜいあがって30レベルデスよ?!何がどうしたら一日でこんな高レベルになるのデスか!!』

「知らないから困っているのよね。」


 佐藤は騒ぐロキを無視して本に目を落とす。


__なお、佐藤のレベル急上昇の理由は、Bランクの魔物であるギガントタートルの単独討伐が原因である。

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