第67話 救世主があらわれた!
[経験値を入手しました。]
[レベルが上がりました。]
脳内にアナウンスが聞こえてくる。
どうやら私と狼は生き残れたらしい。
「……はあ。今日はもう宿に帰ろう……。」
『わふっ!』
私の呟きに、狼も賛成するように鳴き声を上げる。
とりあえず、この巨大鳥を解体しよう。魔物だろうから魔石くらいはあるはずだ。
工作用のナイフを取り出して、巨大鳥の腹を裂きにかかる。
「かった!!全然切れないし!」
想像以上に硬いはねに、分厚い筋肉の層。そして、流れ出てくる血液に戸惑いながら心臓の中に存在する魔石を取り出す。
魔石は、拳大くらいの大きさの、透き通る緑色をしていた。処置が下手くそだったせいで、後は羽くらいしか売れないだろう。
私は諦めてその場を離れ、王都へとむかう………
その時。
バサッバサッ
『わふっ、わふっ!』
狼の警戒する鳴き声と、背後から聞こえてくる、無数の羽音。
「……狼、これ、あげる。」
私は後ろを振り向かずに狼に瞬発力強化薬を渡し、本日二本目の瞬発力強化薬を服用する。
『『『グルラアァァァァァァァアアア!!!』』』
「もう嫌だぁぁぁぁああ!!」
『わふっ』
狼と私は、一直線に王都に駆け出す。
バキバキバキ!!ガツン!ドガッ
背後から凄まじい風圧やら威圧やらが迫ってくる。どうやら、5羽ほどの巨大鳥が私を追いかけているらしい。
お腹一杯だから!もう、戦闘は嫌だから!
足元の土を蹴り上げ、頬を掠める羽を無視し、全速力で王都へ。
王都の門が見えてきた辺りで、私はあることに気がついてしまう。
あれ?このまま王都に向かったら、この巨大鳥が王都に入ってきちゃうんじゃない?
「に、逃げて!門番さん!!」
私があわてて門番さんに叫ぶ。
「おっ?うわぁぁぁぁああ!?ロックだああああああ!!!」
後ろの鳥を見た門番さんが悲鳴を上げて門の内側へと入っていく。
「逃げないで!門番さん!!」
私は思わずそう叫んでしまった。
しかし、もう遅い。
都の中へと避難した門番さんは、すでに安全地帯へと向かっている。それに対して私は王都まであと50メートルほど。
後ろから追いかけてきている巨大鳥はもう目と鼻の先だ。
「ヤバい!死ぬうううう!!!」
息も絶え絶えに全力で王都へと向かっていた、その時。助けは現れた。
「_______ルーラー!!こっちだ!」
「炎よ!球を象りて彼の者を灰とかせ!!【ファイアボール】!!」
熊の獣人に、大斧をもった頬に深い傷がある男。うしろには、もう三人の男女がいる。
呪文を唱えたルーラーさんの斧から、サッカーボールほどの大きさの火の玉がすっ飛んできた。
『グルラァァア!!』
ファイアボールは私の真後ろにいた巨大鳥に炸裂する。巨大鳥は不愉快そうに一鳴きして空中へと舞い上がった。
「ありがとうございます!」
そのまま全力疾走でルーラーさんたち五人のもとへ。
巨大鳥をトレインしてしまったのにも関わらず、後ろに控えていた女性は、私の頭を撫でて優しく言う。
「大丈夫よ。よく逃げ切れたわね。」
「ほんっと、本当にありがとうございました!」
「礼を言うのは後だ。まずはこいつらをどうにかするぞ!」
ルーラーさんが号令を飛ばすと、四人はそれぞれの武器を構える。女性は、魔法の発動体、木製の杖を構えて巨大鳥に対峙する。
_______そして、一方的な虐殺が始まった。
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