第68話 ロックABCDは倒れた!

「やるぞ。」


 ルーラーさんの号令で、四人の男女は一斉に武器を構える。


 始めに動いたのは、ルーラーさんだった。

 大きな斧に炎を纏わせ、ルーラーさんは巨大鳥に突っ込んでいく。


「おらああああああああ!!!」


 雄叫びと共に巨大鳥へと斧を振り下ろす。


ばきぐしゃっ

『グルラァァア!?』


 翼を半分以上叩き切った巨大鳥は、悲痛な絶叫をあげる。

 しかし、ルーラーさんは盛大に舌打ちをした。


「くそっ!!硬てえ!」

「ルーラーさん!こっちに!」


 私はルーラーさんに叫ぶ。


「あ!?何だっ!?」

「強化薬を渡します!」


 ルーラーさんは訳が分からないという声をあげるが、素直に戻ってくる。


 そんなルーラーさんたちに瞬発力強化薬を配っていく。


「これで一分間は瞬発力のステータスが上がります!」

「よくわかんねぇけど、わかった!」

「ちょっ、わかってないじゃん!」


 熊の獣人さんが笑いながら瞬発力強化薬を飲んだ。


「んー、結構いいね。」

「ありがとな!じゃあ、行ってくるわ!」


 ルーラーさんは親指をぐっと立てると、再び巨大鳥の方へと突っ込んで行く。

 瞬発力を50強化してくれるだけあり、ルーラーさんの動きは見違えるように早くなった。


「はははははっ!これはいいな!!」


 巨大鳥の前にも関わらず、楽しそうに笑い声をあげるルーラーさん。目がイっちゃっているように見えたのは私だけじゃないはず。


 そして、スピードを落とさないまま巨大鳥に躍りかかると、斧を振り下ろす。

 片翼の折れた巨大鳥は、その巨体が災いしルーラーさんの一撃を避けることは叶わない。


「おらぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

『グルァアア?!』


 悲痛な巨大鳥の悲鳴と骨が砕け散る音が響く。

 そして、少し遅れて、ごとん、と重いものが落ちる音が響く。


 斧は、巨大鳥の首を完全に切断していた。


 しばらくルーラーさんはポカンと呆けたような顔をして巨大鳥の生首を見つめる。数秒後、他の巨大鳥の警戒するような鳴き声を聞いて我に返ったのか、肩を震わせて天を仰ぎ、豪快に笑う。


「ははっ、はははははははははは!!最っ高じゃねえか!!」

「あーあ……。出たよ。ルーラーの戦闘狂。」


 熊の獣人は返り血を浴びたまま笑うルーラーさんを呆れたように見つめながら、呟くようにいう。そして、周囲の仲間に大きめの声で言う。


「総員、ルーラーの援護を!イレイサーはロックを撃ち落として地上で戦えるようにしてくれ!ペンシルは血の匂いで集まってきた魔物を退治!ケースはルーラーに強化魔法を!僕はできるだけルーラーの戦闘に参加する!」


 一つ勇ましく返事をすると、三人は指示された内容をこなしていく。


「魔力集いて彼の者たちに守護の楯を与えよ。【フィールドプロテクト】!」

「雷よ!槍を象りて彼の者を貫け!【サンダーランス】!」

「【身体強化】!おらっ!」

「ルーラー!強化魔法ぐらい使え!」


 うーん……やれることがないな……

 下手に戦闘に参加したら瞬殺されるし、薬はもう配れないし……


 周囲を見渡した時、血の匂いに惹かれたのか、ゴブリンが1匹こちらにやってきたのが目に入った。


「こっちだったら、何とかなるかも。」


 バッグの中から麻痺薬を取り出し、向かってくるゴブリンに投げる。


「えいっ!」


 麻痺薬の入った小瓶は放物線を描いてゴブリンにかかった。麻痺薬を頭から浴びたゴブリンは『グギャギャッ!!』と耳障りな悲鳴をあげ、地面に倒れ、その場で悶えだす。


 私は、地面に転がったゴブリンに駆け寄ると、工作用ナイフを首に突き刺す。


『グギャァァ!』


 緑の血を流し、ゴブリンはそのまま絶命した。


[経験値を入手しました]

[レベルが上がりました]


「よし!」


 私が小さくガッツポーズをしていると、「おーい」と背後から声を書けられる。振り返ると、焦げたり、首が落ちたりした巨大鳥が4匹、地面に落ちていた。


「終わったぞ。」


 盛大に返り血を浴びたルーラーさんが、いい笑顔で片手をあげる。殺人犯にしか見えないのは、きっと厳つい顔と血まみれの武器のせいだ。きっとそうだ。

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