第4話 言語チートなど存在しなかった(涙目)

 さて、我らが2ーAがステータスのチェックをしてから、三日が過ぎた。

 その間になにがあったかを書いておこう。


 1つ、基礎訓練。

 まあ、魔王を討伐しようっていうのに、命令して銅の剣と銀貨3枚だけ渡して城から追い出すなんて、頭おかしいわけで。

 私たちは1日5時間ほど国王軍の訓練に参加させられている。

 筋力や魔力、知力やHPMPなどのステータスは訓練によって伸ばすことができるとか。

 そのため、筋力のステータスの低い魔法使い組も強制参加だ。

 さて。私のステータスを思い出してみよう。

 ジョブやレベルはさておき、HP20、MP10、筋力15、知力20、瞬発力15、精神力20だ。

 繰り返そう。HP20、筋力15、瞬発力15、だ。

 そんな私が軍の訓練に参加すると、どうなるか?


「走れ走れ走れ!!このままだと魔物の餌だぞ!!」

「イ、イエッサー!!」


「うわー、足名さん、また周回遅れだよ……。」

「確かに、3キロマラソン5本は鬼だけど、ステータスとアビリティうまく使えば、普通に楽じゃない?」

「いや、ほら、足名さん、ステータスがアホみたいに低いから、魔法はあまり使えないじゃん。」


 ……こうなる。

 ちなみに、私が勝手に仲間だと思っていた錬金術師の宮藤くどう 創平そうへいさんは、さっさとローラーシューズのようなものを靴の下に作り出せるようになりやがった。MP多いからなぁ、宮藤くん。


 2つ、勉強。

 オタク男子筆頭、野村のむらくん曰く、異世界転移あるあるらしい。

 まず、字が読めない、書けないから始まり、常識がわからない、貴族が誰だかわからない、隣国がどんな感じだか知らない。

 そうなった私たちは、勉強を教わることになった。

 教えてくれるのは、中二病の人、クリストさんだ。稀に魔法のことも教えてもらえるので、普通に楽しい。

 ただ……


「待って、すごい難しい。全然読めない。」

「……知力が高い人は覚えやすい傾向にあるらしいのですが……正直、ここまでの差があるとは、思ってもいませんでした。」

「俺、知力50あるんだけど……」

「お前は単純に馬鹿だからだろ。」


 ここで足を引っ張りだすステータスの知力20。

 みんながすらすらと覚えていく中、なぜか私はやたらに覚えが悪かった。

 そうだよな。ステータス平均だもんな。その平均のほとんどは平民からだもんな。平民、識字率低いもんな。

 まあ、高知力の中でも、単純に頭が悪かったり、やる気がなかったりする人も覚えが悪かったりする。

 これが、一日3時間。


 3つ、自由時間。

 なんだかんだ言って、この時間が私にとって一番苦痛だったりする。


 なぜか?


 いや、ほら、自由時間のくせに、自由じゃないんだよ。

 女子は各貴族にお茶会に誘われ、男子は軍の訓練に引き摺り込まれる。

 一応、お茶会に参加したことがあったが、二度と参加しない。お茶は高級すぎてよくわからないし、常識がないから、話も面白くない。こちらの話をしようとしても、もうみんな2ーAが話してしまっているため、目新しい話題が見当たらない。そして、目を見張るような魔術や、カッコいい剣技が使えたりするわけでもないため、居心地が悪い。


 もっぱら、図書室に引きこもるようになったが、そこにやってくるクラスの面々馬鹿ども

 図書室の中を走るんじゃねえ。騒ぐんじゃねえ。長剣を振り回すんじゃねえ。しかもなんで抜き身の剣を振り回すんだ。あ、魔法をぶっ放しやがった。やめてやれよ。図書室の司書さんが卒倒してるじゃないか。

 しばらくしたら2ーAが出禁になりそうで怖い。




 さて、ここまでが私の三日間なわけだが、異世界っぽいことができていないわけでもない。

 勉強時間の時に、アビリティの【生成(薬品)】が使えるようになったのだ。

 【生成(薬品)】は、MPを使用して、薬を作るというものだ。……そう。MPを使って。


「うわっ、低級ポーションか風邪薬しか作れねえ……」

「……のの、口調。」


 低級ポーションは、MP10、風邪薬はMP8を使って作れる。

 さて、ここで思い出して欲しいのは、私のステータス、MP10だ。……くどいが、もう一度言おう。MP10だ。


「低級ポーション1個作ったらMP切れって……」


 MPは一定時間たてば回復するが、0になると凄まじい頭痛が発生する。

 どんな頭痛か?

 ……簡単に言えば、課題忘れのせいで丸二日徹夜をしたあと、頭を激しくシェイクしたような、気だるさと船酔いのミックスみたいな感じだ。


 そして、アビリティのレベルを上げるには、とにかくアビリティを使うより他ないのだが……

 私は一回生成(薬品)を使うと、その時点でMP切れになってしまう。そんなことを我が親友(あかねちゃん)に相談したところ、衝撃の事実が発覚した。


「MPポーション使えばいいんじゃないの?」

「え?あかねちゃん、そんなの持ってんの?」


 こうなって初めて気がついたのだが、私はどうやら国からの物資が渡されていないらしい。即日、前田先生経由で物資が届いたが、物資に結構な差別があったらしいということが浮かび上がる一件だった。


 軍の訓練に参加したり、暇があれば【生成(薬品)】を使用したりしたおかげで、一応ステータスアップとレベルアップはしたのだが……


「私、火魔法がレベル4になったの!」

「俺、剣技レベル5!まあ、朝井には負けるけどな!」

「私、知力が90台に入ったわ!」

「おめでとう!私も後3で精神力80ね。」


 ……うるせえ。どうせ【生成(薬品)】レベル2だよ………。


____________________________________________


・生成(薬品)……MPを使って薬を生成できる。

 生成できるもの…低級ポーション

         風邪薬


名前 足名 のの

種族 人間  レベル 1 

ジョブ 薬師

HP 21(1up) MP 12(2up) 筋力 16(1up) 知力 25(5up) 瞬発力 16(1up) 精神力 25(5up)

アビリティ 生成(薬品)【2】(1up) 薬品知識【1】

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