第104話 ジョブの均等性

 材料の定義があいまいだった理由が判明したそのあと。私は、ハーブの一種であるバジルを購入し、それを使って【生成(薬品)】を行った。


「で、どうだった?」


 シンにそう質問されたため、私は出来上がった低級ポーションを一口含んだ。


「うーん、バジル風味。でも、私はバジルの風味ってあんまり好きじゃないのだよね。おいしくない。」


 口に広がるバジルの風味に、私は思わず顔をしかめてそう言う。これだったら、ミント風味の低級ポーションのほうがおいしかった。おいしいハーブって、何かないのかな?


 私のその感想に、シンは少しだけ眉間を抑える。そして、言う。


「聞きたいのは、そこじゃあない。効果に差は出ていないのかってことだ。」

「あら、そっち?」


 シンの指摘に、私は【薬品知識】を使う。


[低級ポーション]

 HPを30回復する。

 材料 水 バジル(ハーブ)


「効果に差はないみたい。ただ、ハーブにバジルが使われているって表示されているくらいかな?」

「なるほど、本当に味が違うだけなのだな……。」


 シンはそう相槌をうつ。とりあえず、試しにバジルで作った低級ポーションを渡してみると、こんなことを言った。


「俺は何度かポーションにお世話になったことがあるが……全部同じような草の味だったぞ?」

「あれ? そうなの?」

「ああ。お前からもらったポーションの味が違ったことにも驚いた。」


 ああ、中級ポーションを飲んだ時驚いた顔をしていたのって、私が頭を振っていたからじゃあないのね。っていうか、草の味って……。

 ふと思い当たることのあった私は、水以外の材料、つまり、ハーブのみをMP代用して低級ポーションをつくる。そして、それをジャックさんに渡す。


 ジャックさんは無言でそれを口に含むと、うなづいて言った。


「ああ、これだこれ。いつも飲むポーションの味だ。」


 そう言われたことで、私はふと思い当たり、シンに質問する。


「市販のポーションってさ、誰が作っているの?」

「俺だって詳しいわけじゃあないが、錬金術師たちだろうな。」

「ふうん? ……ああ、なるほど、そういうことか!」


 突然大声を出した私に、シンはけげんな顔をする。でも、気にしている暇はない。やっとわかったのだから。


「私、今までずっと錬金術師が薬師の上位互換だと思っていたけれども、違うんだね。薬師は薬特化だったんだ!」


 その瞬間、それが正解だと言うように、脳内にアナウンスが流れる。


[生成(薬品)のレベルが上がりました。]

[生成(薬品)のレベルが10になったため、上位アビリティ【薬品生成】が解放されました。]

[**到達により、称号【至高の薬師】を獲得しました。]


 私は、慌ててステータスをチェックする。あれ、ステータスチェックって、すごく久しぶりだな……。


名前

種族    レベル 42(3up)

ジョブ 薬師

HP 235(15up)/235 MP 240(18up)/240

筋力 225(15up) 知力 240(20up) 瞬発力 233(15up) 精神力 246(18up)

アビリティ

生成(薬品)【10】(1up)→薬品生成【1】(new!)

薬物知識【9】(1up) 植物知識【5】(1up) 精神汚濁耐性【7】(2up) MP軽減【7】(2up) 洗濯【5】(1up) 清掃【5】(1up) 料理【2】(new!)

称号

【赦された者】

【至高の薬師】


「あれ、いつの間にレベルアップを……?」

「何かあったのか、シロ?」

「あー、いや、称号を手に入れたっぽくってさ。」


 心配そうにこちらをのぞき込んできたシンに対し、そう答えると、シンは少しだけ嬉しそうな顔をして、言う。


「ああ、神に認めてもらえたのか。よかったな。」

「ん? 神に認めてもらう?」


 私がそう聞くと、シンはきょとんとした顔で言う。


「称号をもらったのだろう?」

「うん。」

「じゃあ、神に認めてもらったのじゃあないか。」

「うん?」


 私は思わず首をかしげる。

 私の様子を見たシンは、一瞬だけきょとんとした表情をした後、頭を抱えた。


「お前、本当に常識を知らないな……。創世神話くらい知っているだろう?」

「……知らないわー。宗教系はノータッチでいたから……。」


 いやほら、異世界転移者にとってほかの世界の宗教って、あんまり興味の沸くものじゃあないじゃん? 佐藤さんとか、例外はいたけれども。

 私にとって称号は悪い思いでしかない。特に、【怨嗟を受けるもの】とか、【道を踏み外した薬師】とか。そう考えると、道を踏み外したのに【至高の薬師】って、すっごい皮肉だな……。


 そんなことを考えていたため、私は気が付かなかった。シンが、小さな声で、


「……お前って、何者なのだ?」


 とつぶやいていたことに。

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