第88話 ワイバーン退治の準備

 ささやかな宴をこっそりと抜け出し、先に村長の家の一室に戻った私は、少し硬めの布でできたソファの上に腰掛け、荷物をほどいた。


 急に開催された宴会は村長の秘蔵の酒が出されるということもあり、たくさんの大人が遠慮もためらいもなくお酒を飲み出したので、アルコールの飲めないお子様は食べるものを食べて即解散となったのだ。


 なお、ジャックさんはかなりキツイ(らしい)オーガ殺しを4本すべて飲み干したらしい。酔っ払いの歓声が壁を貫通して聞こえてきた。大丈夫か?明日はワイバーン退治だぞ?


 いまだに賑やかな外の様子をちらりと窓から眺めてから、私は辺りを見渡す。部屋には木製の壁に木製のテーブル、硬い布でできたソファが二つに簡素な本棚。ただし、本棚には本は一冊も入っていない。


 村長の家は木でできた二階建ての庭付き一軒家だった。一階には応接室や書斎、二階は居住スペースとなっている。


 私たちは二部屋ある一階の応接室に、布団と枕を借りている。ベッド?そんなものはなかった。

 ……別に良いもん。ちょっと固いけどソファーがあるし、ちゃんと壁と屋根があるところで寝れるのだから。


 さて、こんなことを考える前に、さっさと明日の準備をしないと。

 作ろうと思っているのは、中級ポーションと麻痺薬。


 麻痺薬はワイバーンの足止め(翼どめ?)をするため。


 そして、中級ポーションは、今まで使っていた低級ポーションの上位互換だ。

 今まで使っていた低級ポーションは、HPが30しか回復しない。それに対していまの私のステータスは、こんな感じだ。


名前

種族    レベル 39

ジョブ 薬師

HP 220/220 MP 222/200

筋力 210 知力 220 瞬発力 218 精神力 228

アビリティ

生成(薬品)【9】 薬物知識【8】 植物知識【4】 精神汚濁耐性【5】 MP軽減【5】 洗濯【4】 清掃【4】

称号

【赦された者】


 いまの私の最大HPは220。30だけしか回復しない低級ポーションでは少々心もとない。で、中級ポーションがこんな感じ。


[中級ポーション]

 HPを100回復する。

 材料 水 薬草 ポーション


 それなりの回復量だ。ただ、材料にポーションがあるせいで、MPがどれくらい必要なのかが予想できない。

 というか、相変わらず雑な説明文だ。なんだよ、薬草って。雑草って名前の草はないんだぞ?ポーションとか、一体何のポーションを使えばいいんだよ。


 使えるかどうかはわからないが、井戸水と低級ポーションと空の瓶、そして、癒し草の束を用意して、生成。


「おっと、できた。」


  空き瓶だったはずの瓶に、低級ポーションよりも少しだけ濃い緑色の液体が注ぎ込まれている。


「【薬品知識】。うん。中級ポーションだ。」


 使ったMPは30。MPを代用せずにこれなのだから、きっと上級ポーションを作るのにはMPが300必要になるに違いない。


 MPが100近くになった所で生成をやめ、残りのMPで麻痺薬を生成。


「ず、頭痛が痛い………。」


 ソファの上で寝転がり、頭を抱えながら呟く。

 MP切れの頭痛は本当にどうしようもない。MPポーションを使っても一定時間は治らないのだからタチが悪い。


 MPの少ない私は結局、大人たちの宴会が終わりよりも先に眠りについた。


 明日、誰も怪我をしないことを祈りたい。


 


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