第70話 あかねちゃんと二度目のダンジョン

「はっ!!」


 刀が一閃煌めき、オークの首を両断する。

 ごとり、と重い音がダンジョンの煉瓦の壁に反射し、そのうち吸収された。


 生々しい血潮の臭いを嗅ぎながらも、茜は油断することなく通路を確認する。ここはダンジョンだ。何があってもおかしくはない。


 茜の安全確認が終わったところで、側で抜き身の長剣を持って待機していたリュートが口を開く。


「安全確認を忘れなくなったことは良いことだ。だが、余計な動きが多い!腕の振りは最小限だ!」

「はいっ!」


 茜はしっかりと返事をする。

 動きやすい茜の革鎧は、既に緑や赤の体液でドロドロに汚れ、ところどころ焦げたり、裂けたり、抉れていたりと、これまでの激しい戦いを物語っていた。


「……次……右……オーク2……ゴブリン7。」


 右腕に添え木と包帯を巻いたクルートが、茜にぼそりと言う。茜はすぐさま刀に付着したオークの体液を拭いとり、返事をする。


「わかりました。」


 モタモタしていれば、魔物達に死なない程度に殺されかける。今の茜が五体満足でいられているのは、光魔法使いのミーアのお陰だった。


 茜が準備を始めたその時。


「ついでに左からオーク3にジャイアントアント巨大蟻3ね。」

「後ろからコボルト二足歩行の犬2にジャイアントアント5だ。」

「………。」


 淡々と追加の魔物を言うミーアとリュート。あまりの数に茜の顔がひきつった。


 そんな茜の様子を見て、リュートが口を開く。


「まあ、20わけだし、三つのうちどこか一つなら手伝ってやってもいいぞ?」

「それでは、ジャイアントアントの多い後ろをお願いします。蟻酸をこっちに飛ばさないようにしていただければ幸いです。」


 茜の判断に、ミーアは嬉しそうに言う。


「いい選択をするようになったわね。ジャイアントアントは一体一体が弱いから軽視されがちだけれども、時折飛ばしてくる蟻酸は武器を痛めるわ。」


 そう言うミーアの手には、魔法の発動体の杖だけでなく、血のついた大きなダガーナイフも握られている。近接戦も問題なしのようだ。


 茜は刀を左の通路へと向け、詠唱を始める。


「地よ、我が壁となり敵を阻め!【アースシールド】」


 土の壁が左の通路を塞ぐ。これで後ろの心配はしなくても良い。


 そして、右の通路へと刃を向ける。


「ぎゃぎゃぎゃっ!!」

「ぶもっ!」


 粗末な武器を携えたゴブリンとオーク。

 茜は、【精神統一】を使用してから、刀を横凪ぎに振るう。


 ザシュッ!


 研ぎ澄まされた一撃が、先頭を歩いていたゴブリンの首をなぎはらう。


「ぎゃぎゃぎゃっ!?」


 先頭のゴブリンが瞬殺されたところで、力の差を感じ取ったのか、杖を持ったゴブリンが路地の奥へと逃げていった。


_______ゴブリン5、オーク2。

「刀技、【飛斬】」


 短い詠唱と共に、刀を切り返す。

 すると、かまいたちのような状況がおこり、高い位置にあったオークの首がぽろりと落ちた。


「ぎゃぎゃっ!?」


 ほんの数秒で群れを半壊状態にした茜に、ゴブリンは半ば破れかぶれに、錆びてボロボロになったナイフを向ける。


 ぎゃりっ


 茜はMPも魔法も使わずに、ゴブリンの錆びたナイフを両断する。


 ばぎゃっ


 そして、勢いを殺さず、ゴブリン3匹をまとめて叩き切った。


_______残りゴブリン2。


 茜は【威圧】を発動する。すると、ゴブリンは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「ステータス。」


 名前 嶋崎 茜

 種族 人間 レベル 41

 ジョブ 剣士

 HP 258/308 MP 198/276

筋力 319(100up) 知力 285(100up) 瞬発力 376(100up) 精神力 300(102up)

オリジナルアビリティ 精神統一

アビリティ 

 剣術【10】→刀術【10】→刀術(中級)【2】

 威圧【10】→強者の威圧【2】

 体術【10】→体さばき【10】(MAX)

 忍び歩き【10】→隠密【3】

 ダメージ軽減【10】→ダメージ減少【10】→ダメージ減少(中級)【4】

 不屈の心【10】(MAX) 

 精神汚濁耐性【7】

 魔物知識【1】(new)

 土魔法【4】 光魔法【2】 火魔法【2】


「MPが大分減ったわね……。魔力切れには気を付けないと。」


 茜は、そう呟きながら魔法で塞いだ左の通路へと足を伸ばす。


_______のの。私は、絶対に日本へ帰るわ。


 茜の瞳には、強い意志が宿っていた。


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白のの「ゴミ拾い、ゴミ拾いっと。」

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