第55話 閑話 はろうぃーん!!(2)

 閑話に出ることができなかったキャラ達は近況ノートの方に書いてあります。よかったら見てやってください。

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「次はどこへ行こうか。」


 オーガの仮装の人とすれ違い、私はぼそりと呟く。というか、凄いな、さっきの人の仮装。大剣とかめちゃくちゃ重そうだった。背も凄く高かったし。


 暫く適当に歩いていると、南側の客室についた。


「あ、ここ、葵ちゃんの部屋だ。」


 私はノックもそこそこに、葵ちゃんの部屋に入る。


「あら、のの。何のようかしら。」


 そう言いながらハーブティーをすすっている葵ちゃんは、どうやらアリスの仮装らしい。水色のドレスが可愛い。


「ハロウィンだし、皆の仮装を見に行こうかなって思って。」

『ふわー?』


 気の抜けるような声が聞こえた方を見た瞬間、私は足元から崩れ落ちて叫んでいた。


「天使はここにいたっ!!」

「はぁ!?そこは、妖精でしょ!!」


 リリィの仮装は、薄く光を放つ透き通った羽。妖精だ。洋服の花の飾りや、頭の花の冠が良く似合っている。


『ふわぁー』

 リリィはいきなり倒れこんだ私に驚いたのかよちよちと寄ってきて背中を撫でてくる。天使かっ!


「リリィには、成長促進剤。葵ちゃんには普通のクッキーをあげるよ。」

「マンドレイクが入っていたりしないでしょうね?」

「入れるわけないでしょ!!」


 そんなやり取りをしてから、隣の部屋、宮藤君の部屋へ。


「はーい、宮藤君。トリックオアトリート!」

「ジルドレ、足名に飴を渡しておいてくれ。」


 相変わらずごちゃごちゃした部屋のなかで、ペストマスクをつけた宮藤君はなにやらドレスのようなものを作っている。


「かしこまりました。」


 フランケンシュタインの仮装をしたジルドレは、手に持っていた豪華なティアラを作業台の上に置くと、私に飴を渡してくれた。


「ありがとー。で、何を作っているの?」


 私の質問に、宮藤君は振り返らずに答える。


「女子の衣装だ。」

「……嫌に凝っているね。」

「はじめは、福島さんの分を個人的に作っただけだったのだけれど……他の、女子がな…………」


 宮藤君は遠い目をしながら、呟く。

 私は、作業台の上にそっと低級ポーションを置いて、宮藤君の部屋から出ていった。


 でもね、一番かわいそうなのは、巻き込まれたジルドレだと思う。




 部屋を適当に見て回ってから、食堂へ。

 今日の晩御飯は、ハロウィン仕様だ。コックさん、お疲れ様です。


 豪華に装飾された食堂は、魔法でも使われているのかジャックオーランタンがふよふよと浮かんでいる。また、赤ちゃんのゴーストもいるらしく、ニコニコと微笑んだ赤ちゃんは何処か楽しそうだ。


 自分の席に座って適当に食事をつまんでいると、前から声が聞こえてきた。


「朝井君!この仮装、どうかな!」

「アサイ様!私の仮装もどうでしょう!」


 伊藤さんとクレア王女の声だ。

 伊藤さんは砂漠の踊り子風の衣装。エメラルドグリーンの薄布が重なった、大胆なデザインだ。


 それに対してクレア王女は、吸血鬼の仮装で、赤を基調とした、派手なイブニングドレスを着ている。


 しかし、海賊の仮装をした朝井君の目は、福島さんに釘付けだ。


 気まずそうな顔をしている福島さんは、シンデレラの仮装らしい。

 華奢で豪華なティアラが福島さんの頭を飾り、さりげなく花の装飾のあしらわれたガラスの靴は、福島さん自身の儚さとマッチしている。


 私は、寒気すら感じられる四人から即座に目をそらした。


 その時。


「のーのー………」

「ひぃっ!?」


 肩にぽんと置かれた手が、ミシミシと音をたてる。


「すいません!出来心だったのですあかねちゃん!!」


 私は即座に土下座をして許しをこう。

 そんな私を見たあかねちゃんは盛大にため息をついて、言う。


「わかったわ。とりあえずは許してあげる。でも、次からは一言いってからしにゃさい。」

「ぶっ、わ、わかりました。」


 笑いをこらえながら、私はそう言う。


 賑やかな夜は、だんだんと更けていった。






「エリック。今日はハロウィンという異世界の祭りの日らしいな。」


 吸血鬼の仮装をしたリンフォール王子は、狼男の仮装をしたエリックに声をかける。


「ええ兄上。今一つ何をする祭りなのかが掴めませんが、楽しい祭りですね。」


 赤髪からピョコンと生えた狼の耳を撫でながら、エリックは答える。


「……王子達……危ない……そろそろ……食堂へ……。」


 死神の仮装をしたクルートがそっと背後から二人に近より、言う。


「お前のは洒落にならんわ!暗殺者!!」

「うわ、怖っ!!鎌がリアルすぎる!!」


 二人は盛大に悲鳴を上げて、そう言った。

 クルートは、少しだけ寂しそうな表情をしたあと、そっと二人の目の前から消えた。


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 ハロウィンは、死者がこの世にやって来る日。

 仮装した人々のなかには、きっとお化けが混じっているかもしれない。


 それは、案外、貴方の側かも。

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