第69話 おわった!帰ろう、さあ帰ろう!
巨大鳥、ロックを倒したルーラーさんたちは、簡単に解体作業を終えたあと、私に話しかけてきた。
「えーっと、お前………あー、シロ、だったか?」
「あっはい。」
殺人……いや、返り血を浴びたルーラーさんに私は思わず上ずった返事をする。
「俺らはこれから他のロックを狩りに行く。もうすぐ門だが、気をつけて帰れよ。」
「あっはい。……じゃなかった。これ、あげますよ。」
そのまま森の方へと行こうとするルーラーさんたちに、私は10個の瞬発力強化薬を手渡す。
私が持っているだけでは、宝の持ち腐れで意味がないだろう。
ルーラーさんは驚いたようにこちらを見て、聞く。
「良いのか?これ、魔法薬だろ?」
「はい。大丈夫です。」
「いや、でも、高いじゃん!こんなの簡単に渡しちゃダメよ!」
イレイサーと呼ばれていた女性が、私に注意する。が、私だって譲れないものは譲れない。
「命を助けてもらった訳ですし。これくらいの魔法薬ならそこまで値がはる張るものでもないですから。」
笑顔でそう言い、私は後ろでまだ何か引き留めようとする女性を無視して、問答無用で王都に戻った。
薬草採取は明日にしよう。今日この後は絶対に森には入らない。
_______そういえば、狼はどこへ行ったのだろう?
「あー……行っちゃったわよ、あの子。」
イレイサーは、頭を抱えてルーラーに言う。
斧の血を拭っているルーラーは、キョトンとした表情で聞く。
「何がダメなんだ?これはお礼何だろう?」
「ダメに決まっているでしょうがっ!……いや、お礼をすること事態は全く悪いことじゃないわ。でも、私達に渡しちゃダメでしょ。」
理解をしていないルーラーに、イレイサーはつっこむ。頭の痛いやり取りに、グルーが口を挟む。
「派閥だよ、派閥。あの子、どこにも所属していないから一応中立でしょ?」
「ああ、成る程?で、何がダメなんだ?」
相変わらずキョトンとした表情で聞くルーラーに、グルーの方が先に折れた。
「……もういいや、さっさとロックを狩りに行こう。」
「ええ。そうね。」
_______でも、本当にこの魔法薬は何なのだろう?
グルーは、自身のふさふさの毛で覆われた手で、液体の入った小瓶をつまむ。
コバルトブルーの液体がちゃぷちゃぷと入っているだけで、ただの魔法薬に見える。
だが、効果がおかしい。
「普通の魔法薬は、もっと遅くに効果が出てくるはずなんだけどねぇ……。」
「ん?グルー、何か言ったか?」
「大丈夫。独り言さ。」
小さな独り言を聞いたルーラーに、グルーは手を振って言う。
_______いずれにしろ、あの子……シロちゃんは僕らの陣営にいれたいな。
グルーは荷物を整理しつつ、そんなことを考えた。
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