第18話 準備の準備の準備

「腹痛が痛い!」


 私が腹部を押さえてそう言うと、


「のの、何言ってんの?」


 あかねちゃんに冷静に突っ込まれた。

 笑うなよ、騎士さん。


 目が覚めたら、医務室のベッドの上だった。

 光魔法使いの福島ふくしまちゃんに直してもらえなかったら、かなりヤバかったらしい。


 具体的にどうヤバかったか?


 ……内臓がいくつか潰れて、肋骨や背骨が数本折れていた


 らしい、というのも、私自身は気を失っていたせいで、そんなことになっているとは知らなかったからだ。


 福島ちゃんの光魔法がなければ、車椅子不可避の大怪我。前田先生がめちゃくちゃ心配していた。


「いや、本当に教官は鬼だと思う。乙女のお腹を殴るなんて。」

「悪かった。申し訳ない。

…………乙女?」

「……そんなに許されたくないの?」


 ブフォッ


 笑うなよ、騎士さん。割と洒落にならない事態だったのだから。


 何でも、初めの攻撃をかわしたあたりで、ついつい本気になってしまったらしい。

 初手逃走を選んだのが面白かったとか。


 バトルジャンキー戦闘狂め。


 まあ、生き残れたし、良いか。


 さて、遠征の準備をしよう。





 まず向かったのは、宮藤君の部屋。


 あっさりとしたデザインの扉にノック。


「いるー?」

「……誰だ?」


 知らない声。

 どう聞いても宮藤君の声には聞こえない。


「足名ののです。」


 私がそう言うと、ドアが開いた。

 目の前には、金髪碧眼、長身細身の男性(イケメン)がいた。服装は背広だが、鎧を着ても違和感はないだろう。


 だが、人間ではない。

 首もとに金属の銀色。瞳の青は硝子玉。


「ルーンフォーク?」

「よく知っているな。正解だ。」


 どうやら、宮藤君が作った人造人間らしい。

 私は、思ったままの感想を口にする。


「……宮藤君、そこは、美少女じゃないの?」

「……ミスったんだよ。」


 作業台の前に座ったまま、心底残念そうに宮藤君が言う。


 宮藤君の部屋は、謎の機械や、どす黒い色の薬品などでごちゃごちゃしていた。

 が、掃除だけはしっかりとされているのか、埃っぽくはない。


「足名、何の用だ?」

「あ、ナイフを作ってもらえないかなーって思って。」


 私がそう言うと、宮藤君はこちらをむいて、良い笑顔で、


「どんなナイフだ?」


 と聞いてきた。


「いや、切ったら火が出たりするナイフとかじゃないよ?ただ単に、切れ味が良いナイフが欲しいの。」

「……何だ。」


 宮藤君はかなりがっかりしたような声を出した。

 悪かったな。


「じゃあ、さっさと作っておくよ。【錬成】。」


 宮藤君はそう言うと、手のひらに刃渡り十センチほどの小さなナイフを作り出した。


「強化して欲しいなら、エンチャンターの本田ほんださんに声をかけな。ほい。」

「投げないで!?」


 ナイフを受け取った私は、お礼にHP強化薬と瞬発力強化薬を渡し、部屋から出る……前に質問した。


「この人(?)の名前は?」

「ジルドレ。」

「……は?」

「やっぱ、何か変なのか?ドレッシングぽい名前だとは思ったけど……。」 


 金髪碧眼のルーンフォーク、いや、ジルドレをちらりと見ながら、思い出す。

 ……ジルドレって、あれだろ?


「ちなみに、何でそんな名前を?」

「あー……女の子を作るつもりだったから、ジャンヌって名前をつけようと思ってたら、出来たのが男でさ。どうしようと思って佐藤さんに聞いたら、ジルドレはどうかって。」


 ジャンヌの相棒らしいし。

 そう言うということは、宮藤君は知らないのだろう。

 ジャンヌが処刑されたあと、ショタを鬼畜攻め(柔らかい言い方)してジルドレも処刑されたことを。


「……うん。別に、良いんじゃないかな?」


 声が笑いで震えそうになるのをこらえて、私は宮藤君の部屋から出ていった。


 数日後、ジルドレ×宮藤のBL小説が王宮で流行ったらしい。


 出所?

 私はしらないね。


 ただ、多分私たちの世界の人が書いただろうということだけは言っておこう。

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