第52話 おばさんんんんん(涙)

 目が覚めると、既に外は真っ暗になっていた。

 Oh、寝すぎた………。


 とりあえず、体を伸ばして、水を生成して体を軽く拭いて、ふと、気がついた。


「めっちゃお腹すいた……。」


 お茶会のあとなにも食べていなかった私の腹は空っぽだ。

 私は白髪を適当に櫛ですき、お金全財産の入った布袋を掴むと、宿屋の一階へと向かった。



「小さなお客さん、これ、サービスです。」

「サービスにしてはガッツリしすぎてませんか?」


 宿屋のおばさんは外へ出ようとした私を引き留め、食堂に連れていくと、シチューのようなものとパンを出してくれた。


 私はあわててお金を払おうとしたが、おばさんはその手を止める。


「私の気持ちだから。受け取りなさいな。」

「でも、無料タダっていうのは……」


 そのとき、私の腹が「ぐぅ」と空腹を訴える。

 それを聞いたおばさんは聖女のような慈しみの笑みを浮かべ、


「遠慮しないで。タダで食べることに抵抗があるなら、今後もウチの宿を贔屓にしてもらえると嬉しいわ。」

「……はい。」


 私は諦めてシチューに口をつける。


 トロリと温かい、野菜の旨味の溶け込んだ甘いスープ。濃厚なのにくどすぎず、優しい味が私の口の中に広がる。


 次に、ホワイトソースで煮込まれた肉を木製の匙ですくう。

 ホロリとほどける肉は、恐らく鶏肉だろうか。肉にしっかりと染み込んだスープの甘さと、肉自体の旨味。それらが、肉を噛み締めれば噛み締めるほどに溢れてくる。


 ふと、私の目に、涙がたまってこぼれ落ちた。


 料理の美味しさに感動した訳ではない。

 言ってしまえば、ここの料理はあの城で食べたものよりも全然味は落ちている。


 たぶん、疲れていたのだ。

 お茶会で毒殺されかけて、宰相に牢屋につれていかれて、徹夜して薬を研究して、……誰かの命を奪ってしまって。


 泣きながらシチューをかきこんで食べる私の背中を、おばさんは優しく撫でる。


「ゆっくり食べな。」


 おばさんの優しい声が、ふと、私のお母さんの声と重なった。


______帰りたい。元の、世界に。


 パンを口に運びながら、私は考える。


______私達はここに連れてこられたんだ。だったら、帰る方法だってどっかにあるはず。


 帰ろう。家族のいる、地球へ。

 探そう。その方法を。


 私は涙を拭った。


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 シチューが食べたいです。

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