第71話 お金だいじに

 ロックに遭遇した翌朝。


 ほとんど人がいない午前中のうちに薬草採取を終えた私は、あるものの入った麻袋を持って冒険者ギルドに向かった。


 ちょうどこれで十回目の依頼達成。討伐依頼も、ところだ。


 私は、依頼の貼られたボードからゴブリン討伐の依頼をはがし、カウンターへと持っていく。


「すいません、これをお願いします。で、こっちの袋に入っているのが十体分のゴブリンの耳です。あと、こちらが薬草の入った袋です。」

「はい、わかりました。依頼十回と討伐依頼一回の達成を確認しましたので、シロさんのランクはFランクとなります。」


 眠そうなギルド職員さんがたんたんと言い、大銅貨2枚と銀貨1枚を支払う。


 銀貨1枚はゴブリン討伐の報酬だ。10体倒せば依頼達成なので、ゴブリン一匹あたり銅貨2枚だいたい千円

 命がけなのに、切ない報酬だね。


 ただまあ、ゴブリンの魔石は別途買取してもらえるため、駆け出しの冒険者がよくこの依頼を受けるのだとか。


「ありがとうございます。あと、拠点を変えようかと思っているのですが、何かしなければならないこととかありますか?」


 私の質問に、ギルド職員さんは眠そうに答える。


「シロさんはFランクですので、特に届け出等は出さなくても構いません。」

「わかりました。」

_______よし、アレを売るわけだし、今日にでも拠点を変えよう。


 私はそう思いながら、受付カウンターを後にし、買取カウンターの方へ移動した。


 買取カウンターに立っていたのは、どうみてもギルド職員に見えない大男。


 着ているのはただの布の服であるはずなのに、強者のオーラがまったく隠せていない。ルーラーさんと同じく、物理的に彫りの深い顔だ。


 回れ右をしたい衝動にかられつつも、私は右目に傷のある大男に話しかける。


「魔石の買取をお願いします。」

「んー?ああ。ゴブリンの魔石か。良いぞ。傷ナシで一個銅貨5枚、傷アリで一個銅貨3枚だ。」

「わかりました。」


 私はゴブリンの魔石を取り出した。麻痺薬で痺れさせてから討伐しているので、もちろん全て傷ナシだ。


「ほう、初心者にしては上手いな。駆け出しは胴体に武器を刺したりしちまうから、大抵傷が入っているもんだ。」


 買取カウンターのおじさんは、感心したように頷くと、大銅貨一枚を渡した。

 それを受け取った私は、安心して言う。


「じゃあ、もうひとつ良いですか?」

「ん?まだあるのか?」


 私は、バッグの中から取り出したロックの魔石を買取カウンターの人に渡す。


「これ、お願いします。」

「おっ!?」


 拳大の魔石を見たカウンターの人が、思わず裏返った声をあげる。そりゃ、ランクFの子供がでかい魔石を持ってきたら驚くか。


 おじさんは、しばらく呆けたようにその魔石を見てから、恐る恐る口を開く。


「こいつぁ、ロックの魔石か?」

「はい。」


 私がそう答えると、おじさんは押し潰すようなプレッシャーを放つ。


「!?」

 

 こわっ!!精神汚濁耐性を持っているのに足がガクガク震えそうなのだけれど!


 そう思った私をよそに、おじさんは警戒するようにゆっくりと口を開く。


「どうやって、手に入れた?」


 ひきつった顔で、私は言葉を選んで返事をした。


「巨大鳥……いや、ロックに襲われた所を、狼に助けてもらいました。」


 そう答えると、おじさんの威圧が消え失せた。

 おじさんは、頭をかきながら小さく「悪かった、」と前置きすると、硬貨の入った麻袋を私に渡す。


「ほら、ロックの魔石の金だ。嬢ちゃん、運が良かったのだか悪かったのだか、わからんことに巻き込まれたな。」

「ええ。生き残れてよかったです。」


 私はそう返事をしてから、買取カウンターを後にした。こ、怖かった……。


 まあ、いっか。


 宿屋の人にお礼を言ってから、他の町へ行こう。

 で、日本へ帰る方法を探す。


 出たばかりの太陽を見上げながら、私は冒険者ギルドの外へ出た。


 冷たい朝の空気を胸一杯吸い込む。


 私の旅はこれからだ!




「あだっ!!」


 空を見上げていたせいで足元の小石につまづいてしまった。幸先悪いな……もう!


_______________________________________________________________


 安心してください。まだ続きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます