第26話

 僕の作る異空間と現実空間を重ね合わせて、異空間内にあるものを現実世界に一瞬で出現させる魔法……これが出来るようになれば自由自在に僕の指定した場所に僕の欲しいもの、フィールドを作り出せる。

 そんな破格の性能を持つような魔法は一応成功した。

 しかし、二つの空間を重ね合わせる難易度は高く、多くの面積を重ね合わせることが出来なかった。

 そこで僕は重ね合わせる空間を細く長くして、糸一本分を広範囲に出現させるような魔法にした。

 その魔法の結果が一瞬で糸に拘束される混沌竜である。


「ヒャッハー!!!」

 

 僕はチンピラが如く動けなくなった混沌竜に斬りかかり、魔法やら武器やらを次々と打ち込んでいく。


「アーク様!何故かはわかりませんがその言い方はひどく野蛮なように感じます!やめましょう!」

 

 一度呆け、遅れてしまったマリーナも僕に負けじと


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!}

 

 何も出来ずにフルボッコにされる混沌竜が悲鳴を上げる。


「ヒャッハーッ!」


「ですからやめましょう!?」


「ガァァァァァァ」

 

 好き放題されていた混沌竜が糸の束縛から逃れ、自由が効くようになった頃には既にボロボロだった。


「もう糸がない……ッ!」

 

 幾度も糸を補充した僕はとうとう切れていない糸がなくなり、混沌竜を拘束しておくことができなくなってしまう。


「……ここまで痛めつければ十分でしょう。このまま無抵抗の相手を殺し切るのは少しだけ心苦しかったところです」


「マリーナは優しいなぁ……僕なら高笑いしながら殺しきりたいところなのに」


「アーク様……それは性格が悪いですよ……」


「それが僕だとも!」


「それは威張るべきことではありませんよ……」


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 たとえ、血まみれであったとしても誇り高き竜種たる混沌竜はこれくらいで倒れ、眠ることはない。

 その抵抗の意思は全く落ちておらず、ゆっくりと翼をはためかせて空に浮かぶ僕とマリーナの前に立つ。


「ラウンド2開始……かな?」


「そのようですね」

 

「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

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