第14話
「うーん、どうしようかな」
飛び出してしまったマリーナを追いかけて自室から出た僕だったが、よほどの速度で走り抜けているのか、普通に見失ってしまった。
マリーナはラインハルト公爵家全体を見ても最上位に位置するような人間なので、僕では追いつくことが出来ないだろう。
全然気配も読めないし。
「……む。帰ってきていたのか」
屋敷の中を歩いて回っていると、ばったり長男である男、ユーラス・フォン・ラインハルトに出会ってしまう。
僕の兄弟、姉妹は長男と次男の兄が二人。長女、次女、三女の計六人。
ラインハルト公爵家の次期当主として一番注目されているのがこの人である。
「どうやらお前はそこまで優秀ではないようだったな。期待外れだったとも。あんな意味のないことをやるとは」
ユーラス兄上はものすごく僕を見下すような視線を送りながら口を開く。その言葉は実に厭味ったらしい。
ちなみにこの人は優秀なのだが、エゲツないほどに優秀というわけではない。
「あー。はいはいそうですね。んじゃ、僕はここで……」
ここでこれ以上この人と関わるのは面倒だと思った僕はそくさくと立ち去ろうとしたのだが……。
「あら?あなたってばあの銀行の画期的な良さがわからないのかしら?随分とお馬鹿さんなのね」
「は?」
会話に長女であるリリーシャ・フォン・ラインハルトが介入してきたせいで失敗した。
「あー」
すっごく面倒なことになりそう。
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