第11話

 正直に言うと、女の子の部屋に押しかけるのは僕でもちょっとどうかとも思ったのだが、公爵家当主としてただただヒエラルキーの頂点に君臨して終わる学園生活なんて送りたくなかったし、対等な誰かと一緒に過ごしたかった僕は申し訳ないなと思いながらも、権力の力を使ってマリアの家に押しかけさせてもらったのである。

 

 だからこそ、半ば強引に居候させてもらった身だからこそ、今の僕に出来るだけのことして恩返しをしたいと思っているのだ。


「かっかっかっか!これで俺様の三連勝!大儲けじゃ!」

 

 僕の前で高笑いする一人の大男。


「くぅ……ッ!もう一度だッ!もう一度やるぞ!兄ちゃん!ディーラー頼むで!」


「そうだ!そうだ!」


「勝ち逃げなんて許さねぇぞ……ッ!」

 

 そして、そんな大男へと敵対心を三人の男。


「お相手さんはもう一度やることを望んでいるけど、勝ち続けているあんたはここで逃げてやめるかい?」

 

 それを見て大男に向けて煽りの言葉を口にする僕。


「はっ!やめるわけねぇだろ!さらに大型ベット!俺様の儲けすべて突っ込んでやるぜ!お前ら、ついてこれるか!?あぁ!?」


「ついていくに決まってんだろ!おらぁ!!!」


「あたぼうよ!」

 

 マリアに少しでも恩を返したい。

 そんな気持ちを持っている僕は酒場でギャンブルを行っていた。

 まぁ、やっているのは賭け事を行う側でなく、ディーラーサイドだけど。

 僕は酒場で絶対に自分の儲けが出る形のギャンブルを酒に酔っている客に吹っ掛け、かなりの儲けを出していた。


「……やっぱり冒険者は金遣いが荒いな。これだけでまぁまぁ稼げる」


 傭兵やなんでも屋のように戦争に行ったり、魔物を狩ったり、薬草を取ってきたり、掃除したり。

 いろいろなことをしているのが冒険者である。

 歴戦の冒険者ともなればかなり稼ぎもよく、その日暮らしの冒険者はかなり金の落としが良くて結構稼げるのである。

 

 ■■■■■

 

 それから数刻。

 ギャンブルに酒場全体が沸き立ち、悲鳴と歓声が上がって酒の樽がどんどん開けられていく中。


「完全に飲みつぶれたな……そろそろ帰るか」

 

 現在、死屍累々となっている冒険者を相手にギャンブルしてかなりの額を稼いだ僕はホクホク顔で酒場を後にした。


「いや、死屍累々の冒険者を対処していってくれよ」


 酒場のマスターが酷い惨状を作り上げた僕が何もしないままに出ていくことに対して非難の視線と声を投げかけてくる。

 

「頑張ってくれよ。店主」

 

 僕はそんなマスターに笑みを見せ、逃げるように酒場を出て、夜の街へと繰り出した。布団を買うために。

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