第12話

 マリアとの共同生活が始まって三日。


「アーク!入学式でしょ!?今日!」


「……ん。あぁ……」

 

 布団に包まり、心地よく瞳を瞑る僕の平穏な睡眠時間はマリアの襲撃によって打ち壊される。


「うぅ……寒い。入学式とかめんど……」

 

 布団を引っぺがされた僕は体を震わしながらもゆっくりと体を起こす。


「公爵家の当主が入学式を休むなんて前代未聞だし、許されないよ。ちゃんとしっかりね!」


「はぁー」

 

 僕は深々とため息をつきながらも瞳を覚まして立ち上がる。


「おはよ、マリア」


「はい。おはよう」

 

「……僕、制服ってどこやっていたっけ?公爵家当主用のやつ」


「適当に捨てられたから私がちゃんとハンガーにかけて保管していたよ……ちょっと待ってて。持ってくるから」


「ありがと」

 

 ドタバタと自分の寝室へと向かっていったマリアをぼーっと眺めながら、寝起きで霞む頭を働かせて体を動かし、顔を洗ったりなど朝のルーティーンをこなしていく。


「ほら、制服持ってきたよ」


「ありがと」

 

 公爵家当主たる僕の制服はちょっとだけ特別仕様のもので、他の生徒よりもはるかに豪華な制服となっている。


「……ちょっとごてごてしていてこれ好きじゃないんだけどね。まぁ、良いや」

 

 受け取った制服を適当に椅子にかけ、その椅子へと腰を下ろす。


「ちょ!?それがいくらすると!?」


「問題ない。僕の家からしてみたらはした金だから」

 

「……私の家とは違うってわけね。公爵家ってどんだけ金持っているの?」


「まぁ、僕の家は他の公爵家よりも遥かに多いけど……うちは普通に一国の国庫よりも多いよ。総資産は」


「え、えげつないわね……」


「ふっ。それがラインハルト公爵家だよ?さて、と……朝ごはん食べよ!今日も作ってくれてありがとね!」


「私が受けた恩に比べればこれくらいなんてこともないわよ。そうね。食べましょうか」


 僕の座っている椅子の前の椅子にマリアが座る。


「「いただきます」」

 

 僕とマリアは共にいただきますと告げてから、朝食を食べ始めた。

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