第23話
どれだけ武器の交わる音が。
どれだけ魔法の弾ける音が。
どれだけ人と魔の叫び声が。
「ふー」
響いたのだろうか?
「ちょっと……不味いわね……」
四天王を一人、幹部を四人。
たった一人で魔族四人を相手取っているスーシア・フォン・ラインハルトは現状を前に歯噛みする。
「押しきれない……」
激しくぶつかり合っている人間と魔族。
今のところ戦況は五分五分……若干人間側が押しているような状況であり、このまま戦い続ければ人間側がなんとか辛勝出来るだろう。
だがしかし、忘れてはいけないのが、この場に魔王であるロキも裏切り者であるアークもいないことである。
本来であればこんな相手、ちゃっちゃと片付け、あの二人をなんとかするために行動しなくてはならないのだが……。
「……リーナは、まだ手こずっているのね」
本来、この場で最も強いのはリーナである。
四天王の一人くらい簡単に倒し、そのまま幹部の多くを圧倒的な力でねじ伏せることくらい出来るはずなのだが……全然出来ていない。
リーナの絶不調は最悪な事態であった。
「……どうしようかしら」
現状に憂い、どうしようかと頭を悩ませるも結論は出ない。
現状に歯噛みし、考えたところで現実は何も変わらない……スーシアがそんな風に考え、苦心していた時。
「で、伝令ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
空間魔法の使い手だろう。
転移によりこの場へと現れた一人の魔族が驚愕の言葉を上げる。
「ま、魔王城がァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「……ッ!!!」
急に現れた魔族の兵士を前にスーシアは警戒心を跳ね上げ、どうな状況にでも対処出来るよう身構える。
「って、驚いている場合ではありません!今すぐに戦闘をお辞めください!」
そんな魔族が叫ぶのは戦闘の中止。
「人と魔族が争っている場合ではありませんッ!大陸側で不死者による大規模な攻撃ッ!人間も、魔族も……ほとんどが死亡!というか、自分の知る限り全滅ッ!生き残りはここにいる我々だけの可能性もッ!恐らくは我々を裏切った魔王様の仕業かとッ!」
「はぁ?」
続く魔族の驚愕な言葉。
それを前に思わずスーシアは手を止めてしまうのだった。
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