第9話

 再開された学園。


「おひさー」


「うん。久しぶり」


「お久しぶりね」

 

 僕はかなり久しぶりに会うスーシアとエレトリアに挨拶の言葉を告げる。

 二人は僕が教室に入ったときには既に居て、僕が一番最後だ。


「みんな元気してた?」


 席についた僕は二人にそう尋ねる。

 

「私は平民だからね……忙しくなるわけがないよ。私たちの家はいつもどおりだったよ」


「だよねぇ」

 

 僕はスーシアの言葉に同意する。


「そう?私はバリバリ忙しかったわよ?やっぱり嫌ね。平和が乱れているって言うのは。これから起こるのはここ最近に散発していた小規模な戦争でなく、歴史に残るような大戦争。そんな戦争の時代を生きることになるとは思わなかったわ」


「「なんで忙しくなっているの?」」

 

 僕とスーシアの言葉がピッタリと重なる。


「………私ってば結構話していたと思うのだけど、まず食いつくところが最初の言葉なのね」


「当たり前だろ。一番驚きなのはその平民らしくないところだよ」


「そうよ!私たち三人は平民同盟!平民らしくないことされたら困るわ!」

 

「全くだ!」


 まぁ、僕も平民じゃなくて貴族。

 貴族の中でもトップクラスに偉い公爵家の当主なんだけど。

 

「いやね。これが醜い嫉妬かしら……自分よりも優れた人に嫉妬心を向け、排斥し、抑圧する。これが人間の本性……なんて醜いのかしら」


「平民は貴族に抑圧される側だけどね」


「というかエレトリアは母国の方では一般市民に対して抑圧を働いている側なのでは?」


「……」

 

 僕とスーシアの言葉に対してエレトリアは無言になり、視線を明後日の方へと向ける。


「さっ。早く自分たちの席に座りましょう」


 そして、笑顔で僕たちに向かってそう告げる。 


「話しそらしたね?」


「そらしたね」


「……ほら、先生が来たわよ?影が見えたわ」


 エレトリアはそう言って教室の扉を指差す。

 

「よーし、久しぶりのHRと行くぞ。お前ら席につけ」

 

 確かにエレトリアの言う通り、先生が教室に入ってきて声を張り上げる。


「「チッ」」

 

 僕とスーシアは揃って舌打ちをし、自分の席へと戻っていった。

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