第1話
魔族による学園襲撃。
その襲撃が人類社会に与えた影響は大きかった。
死者はなかった……しかし、魔族という伝説上の存在が実際に人類へと牙を剥いた。
その事実はあまりにも大きすぎた。
故に、人類社会は活発に動き始め、どこもかしこも戦争のための準備へと取り掛かり始める。
「……クソ。思ったよりも忙しいな」
そんな中、僕は帝都よりラインハルト公爵領へと戻り、邸宅で仕事に勤しんでいた。
別に僕が長期休暇しているわけではなく、学園は臨時休校となっている。
恐らくだが、在籍している生徒の多くは自身の家へと戻っていることだろう。
ラインハルト公爵家は経済的にも軍事的にも強い影響力を持っている家であり、帝国内の王侯貴族だけでなく他国の王族や貴族なんかからも直接、協力の要請や様々な物品の販売の要望など……僕の元に届く申請書の数は膨大。
スー姉一人で捌けるような量ではなかった。
「ここらへんは大した重要度のない書類だからみんなに任せるね。こっちはそこそこ大事だから、スー姉に。後は僕が対処した方が良さげな案件だから僕がやっちゃうね」
「わかりました」
僕は同じ執務室にいるスー姉や雇っている部下に命令を下し、自分の分の書類に取り掛かっていく。
「……魔族はどこから動く?」
これから始まるのは魔族と人間の全面戦争であろう。
少し前に僕が魔族陣営にちょっかいかけて、起こした小規模な戦闘とは比べ物にならないほどに大規模な総力戦となるだろう。
魔族だって今回のような奇襲以外の戦法も取るだろう。
であるならば……どこから攻撃を仕掛けてくるか。
それを考え、どこを重点的に支援するかを考えなくてはならない。
ラインハルト公爵家は裕福であるが、無からいくらでも何かを生み出せるような一族ではないのだ。
どこもかしこもマジノ線のように硬くすることは出来ず、そしてマジノ線のように致命的な隙を作るわけにはいかないのだ。
「ふー……さて、どうしたもんかねぇ」
様々な書類に目を通し、以前集めた魔族の情報を思い出しながら僕は自分の頭の中で戦略を回し続けた。
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