第19話

 魔導帝国テュフォン。

 絶対にして強大な皇帝を中心に三帝公爵家など、優秀な貴族たちによって統治される世界最強の帝国。

 そんな帝国の有力者たちが一堂に会する帝王議会。

 滅多に開かれることのないそんな会議が魔族たちの対策のため、急遽開かれていた。

 

 ユリウス帝国学園の襲撃から早いことでもう三週間。

 既に魔族による人類侵攻は始まっており、魔族の住まう領域に隣接していたとある大国の防衛線はあっさりと崩壊。

 その大国は人類全国家に対して救援を要請している。

  

 その要請と大国の惨敗を受け、魔族の脅威に対して懐疑的であった国々も事態を重く受け止め、本格的に対策へと乗り出した。

 そして、この帝国でも魔族への対抗策を練るための会議が開かれたというわけだ。


「本格的に会議が始まる前に私から良いだろうか」


 帝国中の貴族が集まり、巨大な会議が人の熱気に包まれた会議室の中で一人の男が手を上げ、立ち上がる。

 その男はストライト・フォン・ラヴァニア。

 ラヴァニア公爵家現当主である。


「……うむ」

 

 会議室の最奥。

 御簾によって遮られ、影しか見えない存在。

 魔導帝国テュフォンが皇帝ロムレス・フォン・テュフオンが肯定の言葉を口にする。


「発言の許可、ありがとうございます。皇帝陛下。大事な会議の前ですので簡潔に。私は今この時を持って公爵家当主の立場から降りる。そして、その後継としてうちの娘であるリーナ・フォン・ラヴァニアが当主の座につくこととなる。大きな変革を迎えることになるであろう我が家をこれからもよろしく頼む」


「ぁ?どういうことだ?」

 

 ストライト殿の発言を受け、真っ先に口を開いたのがベルコー二公爵家当主、カラサラ・フォン・ベルコー二であった。


「言葉通りの意味だとも」

 

 はそう言って自分が座っていた席から立ち上がり、一歩下がる。

 それと入れ替わるようにリーナ嬢が一歩前に出てきてその席へと座る。


「ご紹介に預かったリーナ・フォン・ラヴァニアです。若輩者ですがよろしくおねがいしますね」


「なん」


「僕からも少し良いだろうか」

 

 僕はの言葉を遮るように口を開く。


「一つだけ。ベルコー二公爵家の当主たるに尋ねたいことがある」

 

 皇帝陛下の許しの言葉が発せられるよりも前に僕は言葉を続ける。


「俺が今話している途中で……」


「ベルコー二公爵家領で起きた未だ未解決の大量虐殺事件」


「……ッ」

 

 僕の言葉を受け、カラサラが息を飲み、その傍らに控える筆頭補佐官である男の顔が真っ青に染まった。


「それについて詳しく聞かせてくれないかな?」

 

 僕は小さく笑みを浮かべ、言葉を言い終えた。

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