第25話

 初日の帝王会議後。

 公爵家当主三人がとある一室で集まっていた。


「なんであの場で私の婚約を断ったんですか!……せっかく皇帝の権限を私たち三人で超えられる話でしたのに!」


「いや、僕は別に君と結婚したい!って思っているわけじゃないし……」


「泣きますよ?ここで、私が」


 僕はリーナ嬢に婚約話を断った件について詰め寄られていた。

 前代未聞の公爵家同士の婚約……それが与える影響は実に大きくなるだろうことが予測され、2つの公爵家婚姻関係になればその権限は皇帝陛下を超えるだろう。

 

「……まだ落とせないんですが。もっと、もっと愛を伝えなければなりませんねッ!」


「「……」」

 

 現状でもストーカ行為に及んでいるリーナ嬢の愛し方が更に一段階上に行ったらもうどうなってしまうのだろうか?

 ……僕は考えないことにした。


「じ、実際なんで断ったんだ?私たちの結束を見せ、皇帝の権力を超えるって話していただろう?」


「いや、たしかにそんな話したけど、婚約する必要なくない?」


「……言わなくともアーク様なら理解していらっしゃるでしょう?」


「……」

 

 僕は沈黙し、リーナ嬢から視線を外す。

 三つの公爵家が手を組んだ。

 この事実は大きく、それが一切亀裂のない完全な形であれば皇帝陛下の権限も超越する。

 公爵家同士の婚約という前代未聞の行いであっても当主による権力のゴリ押しさえあればなんとかなってしまうだろう。

 

 しかし、僕がリーナ嬢の婚約を断ったことで僕たち三人の絆は亀裂が走る可能性があることを示してしまった。

 これでは当初話していた僕たち三人の結束を見せ、皇帝陛下の権力を超えるという目的が達成出来たかどうかは微妙なところだろう。


「まぁ、でも……なんとなかなるでしょ。僕たち三人がこうして話しているうちは」


「そうだけどな?」


「……もう既成事実しかッ!」


「現にこの人は僕を惚れさせることしか考えてない……マジで既成事実を作りに行こうとするの辞めてよな?」


「いやぁー。でも私の立場はまだちょっと盤石と言い難いんだけど……」


「そこらへんは多分問題ないよ」


「ほとんどの貴族を味方につけていますしね」


「え?そ、そうだったのか……そこまでやっていたんだ……なんで私が驚いているんだ?まぁ、私がなった時点である程度手玉に取られることは予想していたから良いけどさ」


「ま。そういうこと……じゃあ、僕はちょっと用事があるからここで失礼するよ」

 

「あっ!ちょ!」


 僕は席を立ち上がり、部屋から退出した。

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