第26話

「やぁ……来たよ」

 

 リーナ嬢とスーシアから別れた僕は王城の最上階。

 そこにある一室へと僕は自然体でやってきていた。


「うむ。よくぞまいった」

 

 僕の前……御簾の奥にいる人影、皇帝陛下その人が僕にそう告げる。


「ほんと。よく来たよ?僕……リーナ嬢とスーシアと会っていたけど、途中で切り上げたんだから」


「そう。それだ……お主、何のつもりであるか?」


「えぇ……別に僕は盲目的に皇帝陛下へと忠誠を誓っているわけじゃないよ?」


「かつての約束を忘れたのか?」


「昔と今じゃ状況が違う……そう思わない?元々僕に味方はいなかった。でも、今の僕にはリーナ嬢とスーシアが。二人の公爵家当主がいる。もう既に君は用済みかな?」


「……む、昔の恩を」


 御簾の奥にいる皇帝陛下の動揺が僕の方にまで伝わってくる。

 皇帝陛下と僕。

 実はその関係性はかなり深く、リーナ嬢やスーシアよりも関係性は長い。

 

 僕は普段は御簾の奥にいて姿を晒さない皇帝陛下の姿を知る数少ない人物の一人である。

 ちなみに皇帝陛下の声は魔法で良い感じの渋めのおっさんになっているが、その姿はただのショタである。実年齢は確か二十前半。

 この帝国のトップは全員若者という結構珍しい状態であると思う。


「そんなに僕が義理堅いように見える?」


「……」

 

 僕の疑問に対して皇帝陛下は無言で返す……どうやらよくわかっているようだ。


「まぁでも、僕が確かに誰も味方が居なかった際、手助けしてくれたのもまた事実」


 かつて、僕がマリーナを捕まえようと魔族陣営にちょっかいかけた際、皇帝陛下のお力を借りたのだ。

 あれは結構助かった……まぁ、魔族たちが強すぎてロキをなんとかすることは出来ないという結論になったんだけど。


「僕はあなたの味方だよ。リーナ嬢と結婚し、あんたを廃したりはしないと誓うよ。一応友だろう?わざわざ皇帝陛下と敵対する理由もないしね」


「そ、それならば良い。やはり持つべきものは友であるな」


 ……僕は基本的には誰も信用しない。

 リーナ嬢やスーシアが裏切った時は皇帝陛下を頼り、皇帝陛下が裏切ったときは二人を……保険を作っておくことは大事だよね。

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