第12話

 『すべての者が平等である』という名を語る権力至上主義の学園。

 そんな学園には王族や公爵家のためだけに用意された豪華絢爛な個室が数室用意されている。

 

 公爵家であり、使用する許可が与えられている僕とリーナ嬢はスーシアを担いでそんな部屋へと


「は、はわわわわ……」

 

 この世界でもトップクラスの権力を持つ公爵家の人間である僕とリーナ嬢に連行された可哀想なスーシアは瞳に涙を浮かべ、体を震わせていた。


「な、何をするつもりですか……?」


「別に特に何かしたりはしないよ?」


「えぇ。そうですね……私たちはただ、友達であるスーシアとおしゃべりしたいだけですので」


「……友達。私を、騙していたのに、ですか?」


 スーシアの口から漏れるのは自身が騙されていたことに対する


「……だ、騙してないし?僕はこの国だと公爵だけど、魔族から見たらただの人間。平民も当然よ」


「私もそういうことにしておいてください」


「……」

 

 僕とリーナ嬢のあまりにも雑すぎる誤魔化しを前にスーシアは唖然と口を開く。


「んで、だ。聞きたかったんだけど。なんでそんなに貴族に対して敵意むき出しなわけ?」


「そ、そんな!貴族様方々に対して敵意など……」


「嘘は駄目だよ、嘘は。自分に向けられている敵意くらい平民が貴族に対して敵意くらいわかんきゃ、貴族失格でしょ。ほら、平民が貴族に敵意を向けているとか珍しいじゃん?彼ら、彼女らはまず僕たち貴族に会うことなんてないし」


「……」


「誤魔化しとか無駄だから……僕はね。その気になれば君を殺すことくらい簡単なの。君がどんな不敬な態度を取っても僕は許すから正直に話せ。じゃなかったら殺すから」


 僕は平然と脅迫の言葉を告げ、スーシアへと迫る。


「……」

 

 長い沈黙の後、ゆっくりとスーシアが口を開く。


「私は、元々公爵家の人間だったのです……幼少期の頃に追放されてしまいましたけどね」

 

 そんなスーシアの口から語られるのは僕も初めて知る驚愕の真実。


「え?そうなの?」


「へぇー。そうだったんですね」


「……し、知らなかったんだ。ふ、二人には一応……私が追放される前にも会ったことあるから、知っていると思ったんだけど……」


「知らん」


「知りませんでした」

 

 全然知らなかった。

 僕の幼少期とか初めて出来た彼女もとい婚約者に狂喜乱舞していたから。

 にしても……うちの学園にいた平民全員が公爵家の血を継ぐ者やったんやな……ん?となったらリュークは公爵家の血を継ぐ者三人に喧嘩を売ったということか?

 多分この長い帝国の歴史の中でもあいつだけだろ……皇帝でさえ出来ないことをリュークはやってのけたのか。

 勇者だな。

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