天才にして天災たる悪役貴族様～自身がゲームの悪役に転生したことを知らない天才は己が才覚と努力でゲームシナリオを無視して無双する～

第24話

　僕は先程飛ばした、転移魔法陣を刻み込んでおいた槍の方へと魔法を使って転移……重力に従って地面へと落下しているところだった槍の上へと転移した僕はそれを足場として蹴り、宙へと身を投げ出してから飛行魔法を発動する。

　いとも容易く混沌竜の背後を取った僕は刀を振るう。

「ほいさ！」

　時空間魔法によって距離を歪め、無限の射程を持つようになった己の刀で混沌竜を幾度も斬りつけていく。

「……硬いな」

　僕は自分の刀へと返ってくる感触を前に眉をひそめる。

　幾度も振るわれる僕の刀による一閃。

　一応ダメージは与えているのだが……いかんせん混沌竜の防御が硬すぎて大してダメージが入っていない。

「まぁ……何もしないよりもマシだよね」

　大したダメージにはなっていないけど、何もしないよりは遥かにマシだと思われる。

　安全な場所から確実にダメージを蓄積させていくことにしよう。

　今、混沌竜の注意は僕の方へと向けられていない。

　混沌竜は自身の目の前にいるマリーナの相手でいっぱいいっぱいなのだ。

「ハァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！」

　世界を震わせる混沌竜の咆哮にさえ負けていないのではと思ってしまうのほどに力強いマリーナの叫び声と共に振るわれる紅蓮の輝きを持った大剣は圧倒的な巨大さを誇る混沌竜の片腕とぶつかり、競り合う。

「ヌァッ！！！」

　否。

「まだ……ですッ！！！」

　競り合いにもならない……マリーナが力づくで混沌竜の片腕を弾き飛ばし、一歩。

　後ろへと退かせる。

　マリーナの攻撃は一撃じゃ終わらない、。

　混沌竜の懐へと潜り込んだマリーナは幾度も混沌竜の巨大な体に大きなクレーターを作り、自分を叩き潰そうと振るわれる混沌竜の両腕を尽く弾き返す。

　……これ、僕ってば要らないんじゃないかな？マリーナの強さが圧倒的なのだけど。

「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！」

「おっと」

　混沌竜にも知性はあるようで、このままだと何も出来ずに倒されると思ったのか、体を地面へとつけ、子供のように転がり、暴れ出す。

　無秩序に振るわれる混沌竜の腕やら足やら尻尾やらは実に驚異である。

「あれをされたら流石に近づけません」

　慌てて離れた僕の元にマリーナも近づいてきて、そう告げる。

　どこからでも攻撃出来る僕とは違い、マリーナは近づかなければ攻撃出来ない。

　いくらマリーナであっても荒れ狂う災厄と化した混沌竜の懐に入って大剣を振るうのは無理だろう。

「まぁ、でも……あのままずっとあれを続けてくれるなら好都合……さっさと混沌竜の時空間魔法を解除しちゃうよ」

「よろしくお願いします」

「ん」

　僕は刀を振っている間も構築していた時空間魔法の構築を限界まで早めていく……。