エピローグのその後
誰もいない静かな……たった一人の老婆の行う一人の葬式。
これ以上ないほどに荒廃した世界で頂点に立って人も魔族も等しくまとめ上げて世界を復興させ、世界の各地へと遠征を繰り返した女王。
そんな女王たるリーナのの葬式は実に質素な形で開催されていた。
「……来ると、思っていたわ」
すっかり衰え、老婆となり……今。
棺の中で安らかな表情をして眠っているリーナへと祈りを捧げいている僕へと声がかけられる。
「あなたは、見た目が変わらないのね」
「当然。僕は世界の理より外れたのだから」
僕はリーナの葬式をたった一人で取り仕切るスーシアへと視線を向ける。
「……来ると思っていた。その上で聞く。なんで来た?」
「彼女を愛しているから」
「……なら、何故……リーナを置いていった」
「それが僕の選んだ道だから」
僕は淡々と自分に向けられるスーシアの疑問の声にこたえていく。
「……リーナは!ずっとあなたに会いたがっていた!なんで!私たちを裏切ったァ!」
「それを君たちが知ることは未来永劫ないよ……君たちに僕のやったことの後始末をさせたのは悪かったけどね」
「何も、知らないまま……私に死ねと?」
「……一度。リーナは死んだんだ」
「は?」
「僕はそれを認めなかった。ただ……それだけ」
「何を言っているの……?」
「リーナもスー姉も子供を残さなかった。子供を残したのは君だけ……次世代へとパスを繋げ、この世界に存在する唯一の国の王となったのはスーシアの子孫だ。君は僕なんて言う亡者を追いかけていないで次の世代に色々なものを残してやってよ」
「……お前という悪をのさばらせたまま……いや、今更か。私は所詮……お前とリーナの力で擁立されたに過ぎない。そんな私がお前に何か出来るはずもなし、か」
「その通り」
リーナの棺へと花を添えた僕は立ちあがる。
「じゃあ、これで。もう僕と君が会うことはないだろうよ」
「ここに」
「ん?」
「リーナの墓を作るわ。他にも君の姉や愛人の子も埋める……ついでに私もね。墓の維持は任せるわ」
「あぁ……任せてくれよ。例え、この先の未来がどうなろうともここだけは守るよ」
「そう。それなら良い……また、私が死んだときに」
「……埋葬まで任せると?」
「うん。三人の埋葬は私がするから……私のはお前に頼むよ」
「謹んでお受けさせてもらうよ……ありがとね」
その言葉を最後に僕はこの場を後にした。
■■■■■
「これでようやくあの女との恋愛ごっこは終わりですか?」
「……まぁ、終わりかなぁ」
「お互い会いもせず、直接言葉も交わすこともなく、手紙とかでやり取りしているのを何十年も見せつけられる私の苦行もこれで終わりですか。それなら良かったです。別に会っても良かったんじゃないですか?そういえば普通に30代になるくらいまで毎日手紙をあの女の努力を無視していましたよね?ストーキングして遠くから手紙を書くところまで見ていたのに」
「……くだらない、意地だよ。互いのね」
「ふーん。まぁ、そうですか。ふっ。でも、これでようやく私と真剣に向き合って愛しき唯一の妻として扱ってくれるよね?」
「……あぁ、そうだね。こんな僕で良いのであればいくらでも」
「えへへ。愛しています」
「……あぁ。僕も愛しているよ。マリーナ」
エピローグのその後はまだ終わらない。
天才にして天災たる悪役貴族様~自身がゲームの悪役に転生したことを知らない天才は己が才覚と努力でゲームシナリオを無視して無双する~ リヒト @ninnjyasuraimu
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