概要
家族は壊れ、兄の親友だった男が義兄になった。
くすぶり続ける怒りと暴力衝動を持て余しながら、放火犯を探すことで、なんとか無為の日々をやり過ごそうとする高校生の凪。
そんな義弟を、ただ黙って見守ろうとする夕也。
あまりにも不器用なボーイズ義兄弟の名づけえぬ関係を描くヒューマンドラマ!
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!燻り続けた黒い火種は、いつしか希望の光に変わる。
放火が疑われる火事の中で生き残った弟と、焼死した兄の親友。
そしていまは義兄弟。
そんな複雑な関係の男二人の物語です。
正直、彼らの抱えているものは重い。
犯人を追いながらわかっていく現実も、口当たりの良いものではない。
暴力があり、不貞がある。
彼らの痛みが脳内で反芻されて、読むのがしんどいところもいっぱいある。
だけど、最後は「人間っていいよな」って気持ちになれました。
分かりやすい愛があるわけではない。安易な和解があるわけでもない。
あれだけ沢山苦しんだのに、はっきりと判明しなかったこともある。
それでも二人の関係性は変わっていく。冒頭では予測の出来なかった方向へ。
つまりは光…続きを読む - ★★★ Excellent!!!刺さりに刺さる名前のない関係性
前々から気になっていたお話で、カクヨムネクスト全話無料解放キャンペーンと見かけて読ませていただいたのですが、どうして連載していたときに並走しなかったのかと今になってひたすら後悔しているくらい面白かったです!
親同士の不倫と火事をきっかけに義理の兄弟となった凪と夕也の、兄弟であり、共に事件の謎を追う者どうしであり、秘密の共有者でもある唯一無二の関係性が胸に深々と刺さりました。
凪の兄かつ夕也の親友である透を死なせた放火の犯人は誰なのか、そもそも本当に放火だったのか、だんだんと明らかになっていく謎にどきどきしながら、前のめりに一気読みしてしまいました。
事件の謎に迫る過程が面白いのはもちろ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!不器用すぎる義兄弟の尊さよ……
まだ幼い自分を庇って、実家の火事で焼け死んだ兄。
埋められない喪失感と哀しみは、十年経った今も苛立ちに形を変えてくすぶり続け、兄の親友への怒りとして発露していく。
暴力の発火装置と化した凪を淡々と受け止め、無抵抗のサンドバック状態になる夕也。
そんな折、当時の放火犯の手がかりを得た凪は、クラスメイトの胡桃沢と真相解明に乗り出して――。
その身ひとつには持て余すほどの巨大感情と、その爆発的な訴求力にかけては右に出る者のない著者・草森ゆき氏が本作で描くのは、義兄弟BL。
不世出の傑作『不能共』同様、容赦のない暴力描写や、傷口に塩を塗り込むようなねっとりした書きぶりは健在で、薄気味が悪く…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まともじゃないやり方でどうにかまともに生きている、傷だらけの人たち
火事で兄を失った凪と、兄の親友であり、親の再婚によって義兄となった夕也が、不器用すぎるやり方で向き合っていくお話です。
放火犯は誰か、というところを中心に話は進んでいくのですが、情報が集まってくるにつれ、凪くんのことがほんとうに心配になってきてどきどきしながら読み進めました。
私は、草森さんの書かれる、登場人物たちのなりふりかまわない感情の発露の仕方や、衝動の表現、といったものが、すごく好きなのだと思います。
最後の展開と、凪くんと夕也の真相への向き合い方もよかったな、と思いました。とってもおもしろかったです!