放火が疑われる火事の中で生き残った弟と、焼死した兄の親友。
そしていまは義兄弟。
そんな複雑な関係の男二人の物語です。
正直、彼らの抱えているものは重い。
犯人を追いながらわかっていく現実も、口当たりの良いものではない。
暴力があり、不貞がある。
彼らの痛みが脳内で反芻されて、読むのがしんどいところもいっぱいある。
だけど、最後は「人間っていいよな」って気持ちになれました。
分かりやすい愛があるわけではない。安易な和解があるわけでもない。
あれだけ沢山苦しんだのに、はっきりと判明しなかったこともある。
それでも二人の関係性は変わっていく。冒頭では予測の出来なかった方向へ。
つまりは光の方へ。
迷いながらもいつしか、どこかに区切りを付けて、誰のためでもなく、自分、そして自分たちのために生きていく道を選び取ること。
それが、人間なら出来る。
痛めつけあい、悩んで迷っての末でも、人間であれば、できる。
だからこその読後感だと思います。読んで良かったなって思えます。
ラスト、明日を確かに掴んだきょうだい二人の姿が、眩しかったです。
是非ご一読下さい。おすすめです!
P.S 切に書籍化お願いします。ネクストさん、ここだけに留めておくの、もったいないです。お願いします。
前々から気になっていたお話で、カクヨムネクスト全話無料解放キャンペーンと見かけて読ませていただいたのですが、どうして連載していたときに並走しなかったのかと今になってひたすら後悔しているくらい面白かったです!
親同士の不倫と火事をきっかけに義理の兄弟となった凪と夕也の、兄弟であり、共に事件の謎を追う者どうしであり、秘密の共有者でもある唯一無二の関係性が胸に深々と刺さりました。
凪の兄かつ夕也の親友である透を死なせた放火の犯人は誰なのか、そもそも本当に放火だったのか、だんだんと明らかになっていく謎にどきどきしながら、前のめりに一気読みしてしまいました。
事件の謎に迫る過程が面白いのはもちろんのこと、凪の内面的な成長と、義兄弟ふたりの関係性の変化が特に刺さります。
暴力を振るい振るわれる歪な関係だったふたりが、お互いにお互いを透と重ね合わせて見ているような節があるところから、互いに向き合い、最終的にもう誰も入り込めない関係にたどり着くのが最高でした。
あらすじにもある通り、まさに名前のつけられない関係性の良さがふんだんに詰まっています…!
また、好きポイントを挙げたらキリがないのですが、草森先生の書かれるお話の、章ごとに視点が切り替わる瞬間が特に好きです。
人間が立体になる瞬間というのでしょうか、キャラクターたちがそれまでと全然印象が違って見えるようになって、一気に話にどハマりします。
はじめは凪の視点なので夕也がとにかく得体の知れない人のような印象があったのですが、章が変わって視点が夕也サイドに変わった途端に、ミステリアスなところのあった夕也が、不器用で突っ走りがちなかわいらしいブラコンお兄ちゃんに見えるようになりました。夕也視点だと逆に凪の方が思考回路の読めない気難しい人に見えてくるくらいです。
最後まで読み終わってみれば、不器用で素直になれないこの歪な義兄弟ふたりがとても愛しくなりました。
主人公たちふたりはもちろん、ふたりを囲む皆さんもとても個性的で、出てくるたびにぱっと場が華やぐような明るさのある胡桃沢さんや、胡散臭いところがたまらない鈴谷さんなど、出てくる人たちみんなそれぞれ尖った魅力があって好きでした。
ストーリーも関係性も最高なヒューマンドラマで、とても面白かったです。
未読の方はぜひぜひ読んでください!
まだ幼い自分を庇って、実家の火事で焼け死んだ兄。
埋められない喪失感と哀しみは、十年経った今も苛立ちに形を変えてくすぶり続け、兄の親友への怒りとして発露していく。
暴力の発火装置と化した凪を淡々と受け止め、無抵抗のサンドバック状態になる夕也。
そんな折、当時の放火犯の手がかりを得た凪は、クラスメイトの胡桃沢と真相解明に乗り出して――。
その身ひとつには持て余すほどの巨大感情と、その爆発的な訴求力にかけては右に出る者のない著者・草森ゆき氏が本作で描くのは、義兄弟BL。
不世出の傑作『不能共』同様、容赦のない暴力描写や、傷口に塩を塗り込むようなねっとりした書きぶりは健在で、薄気味が悪くなるくらい歪な関係の二人が、お互いになくてはならない存在へと変わっていく過程の距離感や、好きと嫌いの狭間でアンビバレントに揺れる感情が本作の読みどころのひとつ。
放火の犯人は誰なのか?
なぜ、夕也はここまで執拗に凪の人生にかかわろうとするのか?
この二人の関係性はどこに漂着していくのか――?
ホワイダニット&フーダニットで放火犯の謎を追うミステリ構成もさすがの手練れ。
記憶の中にしかない完璧な兄の姿を追い求める凪、
友の在りし日の姿を重ねる夕也。
不器用すぎる義兄弟ふたりに宿る昏い狂気と静かな覚悟から、
やるせないまでの尊さがぶわっと溢れ出るラストまで、
この熱をぜひ感じてほしい。
いつまでも心に消えない残り火として、じくじく気になり続ける、そんな物語です!
火事で兄を失った凪と、兄の親友であり、親の再婚によって義兄となった夕也が、不器用すぎるやり方で向き合っていくお話です。
放火犯は誰か、というところを中心に話は進んでいくのですが、情報が集まってくるにつれ、凪くんのことがほんとうに心配になってきてどきどきしながら読み進めました。
私は、草森さんの書かれる、登場人物たちのなりふりかまわない感情の発露の仕方や、衝動の表現、といったものが、すごく好きなのだと思います。
最後の展開と、凪くんと夕也の真相への向き合い方もよかったな、と思いました。とってもおもしろかったです!