第26話
「ただいまぁ」
僕はマリアのいる家へと帰ってくる。
「ん?おかえり。遅かったね。どうしたの?」
家に居たマリアが玄関にまで顔を見せ、おかえりの言葉を僕に向ける。
「ちょっと友達とね」
「とも……だち?」
僕の返答に対してマリアは驚愕とともに口を開く。
「え?そんな驚く……」
「アーク……友達居たんだね」
「え?なにそれ。僕に対して失礼じゃない?僕だって友達くらいいるよ」
「そうか……良かったんだね。アークにもちゃんと友達が居たんだ。アークってば色々と独特な感性を持っているし、毎日どこに行くでもなくすぐに家に帰ってきていたからてっきり友達がいないのかと……というか、学園であなたが普段全然学園に来ないって噂になっているけど、なんで?」
「……全然と言えるほど学園生活送っていなくない?まだ一週間にも満たないし、今日は公爵家当主として学園に行ったんだけど」
「今日は、でしょ?他の日はどうしているの?」
「平民に変装して学園に通っているよ」
「……やっぱりそうなのね。やけに強い平民がいる!って言うのを聞いてからそうじゃないかと思っていたのよ。あなたが平民ってことはあなたの友達も平民でしょ?そりゃ早く帰ってくるわよね」
平民や下級貴族になってくると現実的な問題として金銭が立ちふさがってくる。
遊びに行くお金どころか、普通に生活するためのお金すら危ういため、飲食店などで働いているケースが多く、平民や下級貴族なんかは遊んでいる時間なんてないのだ。
エレトリアはともかく、スーシアも飲食店で働いているのだという。
僕もスーシアのように普通の仕事しようか検討中である。
「僕の交友関係については良いんだよ。マリアの元にお邪魔させてもらっている通り僕は公爵家当主として、特別扱いされながら生活していくことに拒否感を抱いているんだよ。わかる?」
「私はただの騎士爵の娘だからそんな気持ちわからないわ」
「残念……それで?今日の夜ご飯は何?昨日は僕が作る番だったから、今日はマリアの番だよね?」
「今日は肉屋でお肉の安売りしていたからちょっと高めなお肉買っちゃった」
「おっ。良いじゃん」
「私はあまり良いお肉を食べながら楽しみ」
僕は今にも鼻歌を歌いそうになるくらい上機嫌のマリアを見ながら今度、公爵家当主が食べるような最高級のお店に招待してあげようかな?って考えながら玄関からリビングの方へと向かった。
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