第25話

「ふぅむ……」

 

 リュートとリンリーが帰った後、僕は一人。

 椅子に座ってリュートの力について考えていた。


「なんで、あんな力がある?」


 リュートの持つ力は何をどう考えてもおかしかった。

 あんな力、絶対にありえない。死霊魔法よりもおぞましく、世界の理に反した絶対的な力。

 

 生まれながらにして持っている力としてはあまりにも強すぎるし、レイブンクロー伯爵家がラインハルト公爵家と同じようにこの世界の理から外れた力を求め、それを完成させたとはとてもじゃないがありえない。


「……マリーナ」

 

 リュートの力はどこか、魔王であるマリーナを彷彿とさせる力だ。

 この世界には絶対的な強さを持っている魔王が率いる魔族たちが人間世界に侵攻しようとその爪を研いでいる。

 強大な力を持った魔王に……特別な力を持った人間が一人。


「なんだそりゃ……ラノベかよ」

 

 この世界は現実だ。

 ラノベの世界でも、漫画の世界でも、アニメの世界でも、ゲームの世界でもない。

 まごうことなき現実の世界だ。


 それでも、この世界はどこか、ラノベのようで、漫画のようで、アニメのようで、ゲームのようだった。


「今更か」

 

 僕は異世界へと転生して無双チートでウハウハしているのだ。

 この時点でラノベそのものではないか。

 魔法だってあるし、冒険者なんかもいる。

 

「物語のような世界……それでもこの世界は現実」


 ……。

 …………。



 僕は何のためにある?

 

 

 僕は何がために生きる?

 

 

「ふふふ……」

 

 

 マリーナはもう居ない。

 

 

 世界のすべてを望み、手にしようとしていたのは遥か過去。



 魔族には僕、単独で勝つことなんて出来ない。



「やっぱり恩はちゃんと返さないとね」

 

 

 僕はゆっくりと立ち上がる。


「これ以上遅くなっちゃったらマリアを心配させちゃうかな」

 

 僕は居候させてもらっているマリアの方へと足を向けた。


「さぁて……勝負だよ。ロキ」


 一度目は僕の勝利。

 でも、その勝利はロキの油断に僕の初見殺しが上手く決まっただけに過ぎない。

 二度目がどうなるか……まだ、わからない。

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