第24話

「えーっと……俺はなんで拘束されているのでしょう、か?」

 

 帝都に存在する誰も住んでいないラインハルト公爵家のための屋敷に僕はリュートとリンリーを招待していた。


「……ふっ。僕へと歯向かってきたそこの女への罰だ……くくく。なぁ、お前は瞳の裏側がどうなっているか、知っているか?」 


 僕は口元を禍々しく歪め、言葉を吐く。


「なぁ!?」


「ヒッ!?す、すみません!で、ですが!ど、どうか!?どうか彼だけは!?」


「冗談だよ」

 

 大慌てで口を開いたリンリーに対して僕はそう返す。


「じょ、冗談……?」


「うん。冗談。いやぁー、公爵家当主というのはまったくもって肩身が狭いね。冗談の一つも通じないのだから」

 

「そ、そうですか……」

 

 笑顔で話す僕の言葉に対してリンリーはなんとも言えないような表情で言葉を返す。


「言ったでしょ?君からは特別な力がするって……それがなんなのか、実験させてもらおうかと思って。君は実験体だよ」


「じ、実験体!?」


「うん。実験体」


「え?そ、それはその……え?」


「大丈夫、大丈夫。僕の父は死霊魔法を極めようとしていたんだよ?」


「駄目じゃないですか!?死んでませんか!?俺!?」

 

「ハッハッハ!安心しろよ。僕の父は僕がちゃんと討伐したから。別にリュートに君の瞳の裏側を見せてやろうってわけじゃないんだ。少しだけ調べ物するだけ。君の体を傷つけたりはしないよ」


「そ、それなら良いんですけど……」


「まぁ、痛くはしないから!」

 

 僕はそう言って多くの実験器具、魔道具を取り出した。

 

 ■■■■■


「……どういうことだ?」

 

 実験を繰り返して数時間。

 結局僕はリュートの特別な力が何なのか、その正体を掴むことが出来なかった。

 色々と『普通』じゃない性質はたくさん見つけることが出来たのだが……。


 性質的には死霊魔法の逆……いや、死霊魔法よりも奥だな。

 明らかに普通じゃない。

 この世界じゃありえない力を神かなんかが強制的に作り出して与えたような……死霊魔法はこの世界の理を壊しかねない『バグ』だが、既にリュートの力はこの世界の理から逸脱している。


「殺すか?」

 

「えっ……?」

 

 ボソリと呟いた僕の言葉にリュートが呆然と声を漏らす。


「いや、君ってばワンチャン世界を一人で滅ぼしかねない圧倒的な力を持っているんだよ。ちょっとありえないかな、これは。ちょっとこの力封印していい?別に力が封印されたからと言ってまだこの『力』の片鱗も目覚めていない君に何の」


「こ、殺されるくらいなら……構わないです」


「そっか。ありがと。じゃあ、サクッと封印しちゃうね」


 僕はリュートの体に触れ、彼の体に封印を施した。


 ■■■■■


 ゲームの主人公。

 制作陣に愛され、特殊な力をもらったゲームの根幹が、何故か現れたイレギュラーによってその力を封じられた。

 『世界』のシナリオは本来ありえない方向へと捻じれ、曲がっていく……。

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