第27話

 公爵家当主としてではなく、平民として送る学園生活。

 友達であるエレトリアとスーシアと楽しく授業を受け、マリアと共に生活する日々は実に楽しいものだった。


「あぁー。中間テストだぁ……うぅ。自信ないよぉ」

 

 テスト。

 それが生徒の心のえぐるものであることはたとえ世界が変わっても変わることのない不変の真理である。


「安心してちょうだい。たとえ無理でも私が笑ってあげるわ」


「笑ってあげるわ!?……笑ってあげるわ!?」

 

 エレトリアの言葉に対してスーシアは同じことを二回叫ぶ。


「そこは勉強を教えてあげるわ!?って言うところじゃないの?」


「私は同じくらいの学力のアルトと一緒に勉強してもっと上の点数を目指してみっちり勉強するから……一緒に勉強できないの」


「そういうことなんだ……すまんな。スーシア。お前は赤点を取るかもしれんが、頑張ってくれ」


「ひどくない!?」

 

 僕はエレトリアの口車に乗って、スーシア虐に加担する。


「うぅ……赤点で補習なんて事になったら本当にまずいんだよぉ……放課後、補習なんてことになったら私の家計は火の車だよ。今でさえカツカツなんだから」


「大変だな」


「大変ね」


「うぅ……同じ平民なのにこの格差はなんなの?あまりにも不平等だよ……」


「「どんまい」」

 

 僕とエレトリアはスーシアに対してそう声をかける。


「うぅ……」

 

 涙になっているスーシアでしか得られない愉悦成分を得ていた僕にクラスメートの話す声が聞こえてくる。


「ねぇ、聞いた?レイブンクロー伯爵家のリュート様が謎の人物に襲われ、意識不明の重体だって話」


「えぇ……聞いたわ。かなりの怪我なんですってね」


「たまたまその襲ってきた人物の頭上に隕石が落ちて死ななかったら殺されていったって話よ」


「それが魔族なんじゃないかって噂もあって」


「嫌ね。そんな物騒な話」


 その話の内容はリュートに関する話だった。

 魔族らしき男に襲われて、意識不明の重体なんだそうだ。

 運良く隕石が魔族に落ちるという奇跡のような出来事のおかげでなんとか命拾いしたらしい。


「……本物の主人公かよ」

 

 僕はその話を聞いて思わず口から言葉をこぼれ落とした。

 魔族に襲われた……?なんだ、その主人公みたいなイベントは。

 ……ちょっとリュートの力を封印したままにするのも少しだけ危険かもしれないな。

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