第28話
意識不明の重体となってしまったリュートの話もあり、ちょっとした不穏な雰囲気が漂っている学園。
「はぁー、大変なことになっているわね!まぁ、面倒な諸問題は貴族の人たちがなんとかするだろうから私には関係ないけどね!」
昼食を食べるお昼の時間。
人の少ない中庭で弁当を広げる僕とスーシアとエレトリア。
「……これで今、私たちの前に魔族が降り立って来たら笑えるわね」
余裕綽々と言った様子でお弁当を食べるスーシアに対してエレトリアがからかうように告げる。
「ちょ!?そんな怖いこと言わないでよ!?」
エレトリアの冗談。
しかし、デフォルトが真顔のエレトリアの告げる冗談は非常にわかりにくく、真に受けたスーシアが悲鳴を上げる。
「冗談よ」
「冗談なのッ!?そ、それならよか」
「「……ッ!?」」
僕とエレトリアは同時に立ち上がり、戦闘態勢へと移行する。
「え?な、何?何?ど、どうしたの?」
「おい。冗談じゃなかったのかよ」
「これは予想外。本当に来るなんて予想出来るわけないわ。私たちはただの平民よ?狙われる理由がないわ」
「まぁ、そうだな……ったく。んじゃ、どういうことだ……よォ!!!」
僕は足を振り上げ、地面へと叩きつける。
軽く魔法によって強化された僕の振り下ろしは地面へと大きな振動を与え、揺らす。
「……魔法、使えたのね」
「使えるだけだけどね。実践で使えるほど極めて無いかな」
「ぶっぽーッ!!!」
僕の振り下ろしによって揺れる地面……そこから一人の異形の化物が姿を表す。
「ぐごご……やはりそなたら、只者ではないな?」
異形の化け物。
土竜が二本の足で立ち、より禍々しく凶暴化したような異形の化け物が僕たちに向かって口を開く。
「貴族にすら勝つ平民……優先すべきは明確な脅威よりも名もわからぬ脅威よ。未来あるお主らには悪いが、ここで死んでもらうぞ?」
「「……」」
「えっ……?巻き込まれた?」
僕は呆然と声を漏らすスーシアの方へと視線を送らないことを決意する。
「そ、それはこちらのセリフだ……人間に害為す者よ。栄光ある帝国が誇る学園の生徒として、貴様に天誅を加えてやろう」
「い、以下同文!」
「良いだろう!我は魔王軍幹部、マスタングッ!一人の武人として!いざ尋常に勝負!」
僕とエレトリアは共に大地を蹴り、土竜の魔族へと向かっていった。
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