第36話
アークの口から殺した……そう言われていたはずの魔王がこの場に現れ、この場が騒然となり、困惑が広がっていく。
「ま、魔王陛下……?」
四天王統括である魔族の男は跪くか、跪かないか……悩み、中途半端な態勢になりながら口を開く。
「今さら私に陛下をつける必要などない。魔族に対する興味など一ミクロンもない」
魔王は四天王統括の方へと視線を一切向けることなく一直線にアークを膝に抱いて座り込むリーナの前へと立つ。
「私の興味はただ一つ。アークのみよ」
一人の男を挟み、ロキとリーナが向き合う。
「退け、小娘。それは私のものだ」
「退かない。アークは私に愛していると告げたの」
ロキもリーナも両者互いに一歩も引くことなく火花を散らし合う。
その二人な険悪な雰囲気にこの場の全員が飲まれ、誰も口を開くことが出来なくなる。
「そんなもの、すぐに消えてなくなるくだらぬ一時の迷いに過ぎん。これから私と続く永遠の逢瀬の間に貴様などアークの中から消えていくのみ」
「……永遠の、逢瀬?」
「ただの人の身にしかすぎぬ貴様には過ぎた話よ……のぅ?アーク」
ロキは真っ直ぐアークのことを眺め、話しかける。
「あなたがどんな妄想をしているのかは知らない……でも、もうあなたのアークは居ないのよ」
「くくく……なんとも滑稽なことだ。世界の糸も、己の死にも、アークの目的にも、私の目的にも、何もかもに気づかず、他人の手の平の上で踊り続ける道化よ」
「……何が、言いたいの?」
「感じぬのか?小娘……アークから感じ取れる莫大な力を。この世界を滅ぼせるほどの膨大な力をッ!さぁ!起きよッ!アークッ!私との契約を果たせぇッ!!!」
笑みを浮かべ、叫ぶロキ。
「……そんな派手な演出つけるなよ」
「ッ!?」
空間魔法が発動し……死んだはずのアークの体がリーナの元からロキの隣へと転移する。
「出ずらいだろうが」
どこか気まずそうにしているアークは確かに変わらず体を動かし、口を開いたのだった。
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