第37話
「あ、アーク……?」
さも当たり前のように立ち上がったリーナが僕を見て驚愕の声を漏らす。
いや、彼女だけではない。
この場にいる全員が当たり前のように起き上がった僕に対して驚愕の視線を向けている。
「ふー」
僕はそんな彼らを無視し、自分の状態を確認する。
体が軽い……僕がかつて、引きちぎった白い糸をはっきりと知覚出来る。
「ふむ」
否が応でも理解してしまう。
自分がこの世界の理から逸脱したことを。
「どうかしら?あなたもこの世界に入ってきて」
「……なんとも思わんよ」
僕はロキの言葉に対して、素っ気なく返す。
「なん、で?」
「なんで?別に疑問に思うことか?僕の目標は不老不死だ。僕は目標を完遂した。ラインハルト公爵家の長年の悲願であった完成された個へと僕は至ったのだよ」
リーナの疑問に対して淡々と答えを返している僕の心臓を背後から貫かれる。
「う、嘘……」
「心臓は動いていない。意味などないよ。スー姉」
「これならッ!」
次は首。
僕はスーシアによって首を斬られる。
「……無駄なのだがなぁ」
地面をただの球体として転がり続ける僕は口を開き、体を動かす。
僕の体は僕の首を拾い、何気ない動作で頭に乗せればサクッとくっつく。
「僕は不死。たとえ体を溶かされようとも何気なく復活できる。君たちは生物としての格が違う」
僕は自分に刺さっている剣を抜き、そのまま剣を殺す。
剣はボロボロと崩れていき、何もなくなる。
「僕は目標を達した。既に十分。僕の目的のため、君たちは良く動いてくれた。感謝しよう……」
僕はふわりと空へと浮かび上がる。
そんな僕の隣には当然のように
「さようならだよ。みんな。僕はもう人間社会には干渉しない。魔族と人間が争い続けるでも、協力して復興するでも、僕への復讐心を募らせて僕を探しに世界を旅するでも良し……好きにすると良い。僕が二度と君たちに、ロキ以外の人間と会うことはないからね。それじゃあ」
「バイバイなんだよ」
「待ってッ!!!」
悲痛なリーナの叫び。
それを聞こえなかったことにし、僕はロキと共にこの場から転移して立ち去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます