第9話
僕の住む国からちょっと遠いところで起きた戦争。
たとえその戦争が起こった原因の一端に僕と言う存在があったとしても、その戦争で僕が巨万の富を稼ぐとしても。
遠くの戦争なんて僕には関係ない。
「次はどこ行く?何か買いたい物とかあるかな?」
僕はいつも通り人生を謳歌していた。
「そうですね……」
僕と手を握り、共に街を歩くマリーナは僕の言葉を聞いて頭を悩ませる。
現在、僕とマリーナはデート中。
とある高級商店街を散策していた。
「あっ。そういえばアーク様のご実家にお呼ばれしていましたよね。その時用の服が欲しいですね。おそらくパーティーが開かれるでしょうし。アーク様も必要になるでしょう?」
「あぁ……うん。そうだね」
僕はマリーナの言葉に頷く。
圧倒的な金銭を手にした僕が前まで来ていたような服を使いまわしたりするのは許されないだろう。
貴族社会では見栄が何よりも重要視されるのだ。
「宝石とか金とかでギラギラとした服好きじゃないんだけどなぁ、僕」
「そんなわがままは許されませんよ?アーク様はいずれラインハルト公爵家の当主になられるお方なのですから」
「僕の継承権低いんだけど」
さも当たり前のように言ってくるマリーナに対して僕はそう言葉を返す。
長男もいるし、次男もいる。
現状における僕の継承権は限りなく低いだろう。
「……?それでもアーク様は当主になられるでしょう?なれるだけの能力がありますから。しっかりと他を蹴落として当主の座に座られるでしょう?」
「もし、僕がならないと言ったら?」
「そ、そんな!アーク様がラインハルト公爵家の当主になれないなんてこの国の損失ですよ!?ほ、本当にならないのですか!?な、なりますよね?」
「ふふふ」
大慌てしているマリーナを見て僕は笑みを漏らす。
「まぁ……うん。当主になるけどね。そのための計画もあるし」
そして、僕はぼそりと呟き、マリーナの言葉を肯定した。
「で、ですよね……」
「うん。そうだよ。さ、服でも買いに行こうか……せっかくだし行ったことがないお店に行かない?」
「えぇ!?本気ですか!?」
「せっかくだし?」
「えぇ……気分だけで行くお店を変えるのですか?貴族らしくないところはアーク様のらしさであるとも言えますが……」
「普通じゃないことをするのも楽しいものだよ?」
いつも行っているお店以外に行くことが普通じゃないと思えるくらいにはこの世界の貴族の価値観に染まっている僕は、それでも普通じゃないことをしようとマリーナを誘い、笑った。
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