第8話
「何やろうかなぁ……」
もはやただの僕専門のお茶くみとなったリヴィアの代わりに商会長として活躍するようになった僕は自分のもとに上がってくる書類に目を通し、判子を押しながらぼそりと呟く。
「どうすればいいと思う?リヴィア。僕は物流握れたらいいなぁ……って思っているんだけど、流石にまだきびぃかな?」
「えぇ!?それを私に聞きます!?」
唐突に話の矛先をぶつけられたリヴィアが驚愕の声を上げ、お茶を淹れていた手が止まる。
「当然……君は優しさという素晴らしくも、商売の上では足枷になるものを背負っていない。もう、君に従業員が見えない。見えるのは数字だけ。僕の影響を受け、長き時を生きた君の経験と知識が開花し、世界有数の知恵者になったと僕は信じているよ。君は僕の代わりにこの大きな商会の歯車を回してほしいからね」
「……そ、それはあまりにも評価が重すぎると言いますか」
「リヴィア、お茶こぼれている」
僕の話を聞き、固まっていたリヴィアの手に握られているポットから大量のお茶がこぼれだしているのを教えてあげる。
「あちゃーッ!」
僕の言葉を聞いたリヴィアが大慌てでこぼれたお茶の後始末を始める。
「……少しリヴィアさんがうらやましいですね。アーク様からそこまで信頼してもらえるなんて」
僕とリヴィアの会話を聞いていたマリーナがぼそりと呟く。
「マリーナは僕の婚約者で、社交界のパートナー。今までのように僕の隣で笑い、貴族として立つ僕を横で支えてよね。これからも」
「……うん!」
僕の言葉にマリーナが頷く。
別に自分の婚約者であるマリーナにリヴィアのような金銭面での協力を求めているわけではないのだ。
彼女いない歴=年齢だった前世の僕とは違う……僕の今世の華やかな人生を彩る可愛い彼女であってほしいのだ!
マリーナのこと好きだしね、僕。
「おぉい!ボス!とうとう他国の連中が動きだしやがった!久方ぶりの戦争だァ!」
僕が心の中でマリーナの愛について考えていると商会長室に裏家業から足を洗い、ア〇ムのようになった金の番人のトップであるウォルフが慌てて飛び込んでくる。
「あぁ。うん。僕の出していた指示通りに動いておいて」
「え……?そ、それだけ?」
「うん。それだけ」
「ふふふ。金融は支配した。なら次は情報を支配しないとね?」
物流は最後かな……というか、流石に物流の重要性はこの世界のトップたちもわかっている。
金融、情報……そこまで文明レベルが発達していない
正直に言ってこの世界にはなまじ魔法と言う奇跡があるせいで基礎的な概念、戦略の発展がいまいちで、情報戦のじの字も知らないような戦いをしているのだ。
「やっぱ現代知識チートはえげつないね。うん」
僕は一人、小さな声で呟いた。
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