第7話

 この世界で最も稼げる商売とは何だろうか。

 いろいろな候補が挙げられるが……そのうちの一つに金貸しは入るであろう。

 それは前世で僕が生まれ生きた地球において金貸しを営んでいたユダヤ人たちが絶大な力を手にしたのを、国家に対してすら金貸しを出来るほどにまで成長したロスチャイルド家を見ればわかるだろう。


 僕が『金の番人』にやらせたのは金貸しだ。

 情報操作も、情報統制も、情報収集も……この世界にありとあらゆる業種の商会を持っているラインハルト公爵家がトップだ。

 すべての情報を制しているラインハルト公爵家の力を振るう僕が主導の金貸しがうまく行かないはずがなかった。

 

 たった一年。

 それだけの時間で僕は世界の金融を支配し、世界中に銀行を置き、世界の資本のほとんどを管理下に置いた。

 いやー、この世界にはユダヤ人のような金融を支配し、ノウハウを独占していた人たちがいなく、まともなノウハウを持ってない人間が小規模に金貸しを行っていただけだったからこんなにも簡単に行けた。

 まさか僕もここまでうまく行くとは思っていなかった。


「んー!おいしいですぅ」


「それなら良かった……これ、僕が作ったんだから。おいしそうに食べてもらえてよかった」

 

 父上から受けた命令をほとんど達成したと言っても良い僕は実にのんびりとした生活を送っていた。

 婚約者であるマリーナを自分のもとに置き、楽しくお茶会していた。


「え?これをアーク様が作ったのですか!?さ、流石ですね。プロ顔負けです」


「まぁね。僕はこれでも天才だから」


「……あなたが天才であることを疑う人はこの世界にいませんよ」


「ふふん」

 

 僕はマリーナの称賛を受けて胸を張る。


「それにしても本当に嘘みたいな話ですよね……たった一年で世界が大きく変わりました。あんなにも重かった金貨が紙一枚です」

 

 マリーナは銀行が発行している紙幣をひらひらと振る。


「……本当にこのシステム大丈夫なんですか?いつか破綻しません?紙幣と交換できるほどの金がなくなったときとか……集めた金は金で別のことに利用して消費しているのでしょう?」


「大丈夫、大丈夫。今、金貨を製造しているのは僕だからね。最悪金貨の純度を下げれば対処可能だよ」


「え……?今、やばいこと言いました?」


「うん。やばいこと言ったね。でも、大丈夫。管理しているのは僕だから」

 

 そう。

 銀行を管理しているのは僕……ラインハルト公爵家の人間である僕なのだ。

 貴族が圧倒的に偉い時代なのだ、最悪何かあっても権力でゴリ押せる。だから僕はここまで阿保みたいな規模で銀行を設置したのだ。

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