第10話

 入ったこともないお店で僕は腰から剣をぶら下げ、動きやすい軽装に身を包んだ僕はその場でくるりと一回転する。


「良い感じじゃないですか?凄腕の冒険者に見えますよ」


「ありがと……まぁ、僕はあまり戦闘が得意じゃないんだけどね」

 

 今のところ僕は商業の方に大きな力を割いており、自身の強化については結構後回しにしてしまっているような状況だった。

 一応剣も振れるし、魔法も使えるが、圧倒的だと言うわけではない。

 一流冒険者やほとんどの貴族たちよりも強いと自負しているが、超一流の冒険者や 武闘派の高位貴族の当主なんかには勝てない。


「十分お強いと思いますよ」


「僕よりも強い君に言われても釈然としないよ」

 

 ラインハルト公爵家が最も重要視するのは『力』。

 うちの家が求めるのは女性としての美しさや気品、男を立てる気づかいなんかよりも、商売において強い力を持つ者、単純に力の強いもの、研究分野で圧倒的な活躍を出来る力を持つ者……ただただ力を追い求める。

 

 ラインハルト公爵家に認められ、天才とずっと言われ続けている僕の婚約者に選ばれているマリーナは年齢に見合わない隔絶とした純粋な武力を持つ者だった。


「えへへ。お褒めいただき恐縮です」


「うん。僕は全然褒めていないぞ?」


「アーク様が私のことを自身よりも強いと言ってくださった。これはお褒めなのです!」


「そ、そう……普段からもっと褒めてあげる必要があるか……?これ」


「ふふふ。私は褒められて伸びるタイプなのです。たくさん褒められることを期待していますよ」


「うん。愛する婚約者からのお願いとあれば」


 僕はマリーナの言葉に頷く。


「それでは、最後にアーク様が今お召しになっている服を購入して帰りましょうか。もうすぐ夜となってしまいます」


「そうだね」

 

 既に日は傾いている。

 帰るべき時間だろう。


「……そういえば、さ。どうやって持ち帰る?服。阿保みたいに買ったけど、二人で出てきたから荷物持ちいないじゃん」


「あっ……」

 

 僕は自分の分の正装、マリナのドレス、普段着、下着類、ネグリジェ、アクセサリー……買い物が楽しくてついつい買いすぎてしまって大量にある買い物袋をみてぼそりと呟く。

 どうやらマリーナも何も考えていなかったようだった。

 

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