第28話

「……ァァァァァァァ」


 以前、高位の竜種と戦ったことがある人間から話を聞いていたところ……竜は追い詰められた際に最後の悪あがきとして強力なブレスを放つということを聞いていた。


「……ッ!?これは、流石に……ッ!」

 

 だからこそ、僕はそれに対応することが出来た。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 地面に体を落とし、力なく首を僕とマリーナの方に向けていた


「残念……既に僕の手の中だ」

 

 混沌竜の放つブレスの方へと僕が投げた短剣……それは異空間への入口となる。

 

「ガァ……ッ!?」

 

 混沌竜の放ったブレスは僕とマリーナの元へと届くことはなく、代わりに混沌竜のお腹で暴れ出す。


「……え?何をしたんですか?」

 

 内側からブレスが吹き荒れ、爆散して血肉の雨を降らしてる混沌竜を前にブレスへと警戒していたマリーナは呆然とつぶやく。


「混沌竜と僕の相性は限りなく良いからね……混沌竜の内側にある膨大な力が、決まった形を持たない歪んだカオティックな力が空間を捻じ曲げた結果、最初に出会った山ほどの巨体となった混沌竜がいるような空間が出来上がるんだけど……僕はその空間を捻じ曲げるほどの混沌竜の力に干渉出来るんだよね。時空間魔法でちょいちょいと介入すれば混沌竜の内側へと混沌竜のブレスを転移させることが可能なの」


「……え?なんです?それ……全然意味がわからないのですが……反則みたいなことをしていることだけはわかります」


「まぁ、相手が混沌竜だったからこそ出来る荒業だよ……僕がやっている時空間魔法は感覚的なものが強いから上手く説明出来んのや。わかりにくいのは許して」

 

 混沌竜と僕の相性はすこぶる良かった。

 『混沌』たる力が齎す空間的な歪みを時空間魔法の使い手たる僕は支配し、利用することが出来た。

 だからこそ、ここまで簡単に倒すことができた。

 相手が別の竜種だったらもっと困難で、僕の持っている諸々の計画も色々とズラさなきゃいけないところだった。


「んじゃ、マリーナ。領地の方に帰るよ」


「え?もう帰るんですか……?今帰ってもどうせお父上に無理難題を押し付けられるのが落ちじゃないですか。もう少しくらいこの街でゆっくりしていっても良いんじゃないですか?」


「いや?今回は父上に面倒事を押し付けられるようなことにならないとも……ふふふ。僕の夢は大きく世界征服!そのための第一歩として、さ。とりあえずサクッとラインハルト公爵家の当主になろうと思っているからね」

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