第27話

 混沌竜。

 最強の竜種の一体にも数えられる怪物の力はかなり強い……決してその身がボロボロだからと言って侮れるような相手ではない。

 

「ハァァァァ!!!」

 

 基本的に混沌竜の相手をするのは僕じゃなくてマリーナである。

 山ほどの巨体であった混沌竜の一撃を弾き返す事のできるマリーナは混沌竜の繰り出す腕の一振りに対応し、それどころか逆に強く攻め立てることが出来る。

 とはいえ、彼女であっても混沌竜の繰り出す数々の魔法を相手するのは難しいため、その対処をするのは僕の仕事だ。


「無駄」

 

 僕は時空間魔法で混沌竜の練る魔力をズラし、上手く魔法を使うための魔力を練れなくさせてやる。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 そんな僕を混沌竜は煩わしそうに僕を睨みつけ、今すぐにでも叩き潰そうと僕の方へと迫ろうとする。


「行かせません」


 しかし、そんなものマリーナが許さない。

 僕の方へと向かってこようとする混沌竜はマリーナの猛攻によって動きを止められる。


「ガァッ!!!」


「僕のことも忘れないでね?」

 

 そんなマリーナに向かってブレスを吐こうとした混沌竜の口元に巨大な鉄の塊を突っ込んで止める。

 

「……ァゥ」

 

 混沌竜はブレスを吐くのを中断して、僕の投げ込んだ鉄の塊を噛み砕く。


「ハァァァァッ!」

 

 意識をマリーナから鉄の塊へと移した混沌竜の隙をマリーナが見逃すはずもなく、ここぞと言わんばかりに攻め立てる。

 

「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 それから少し経てば混沌竜の言葉に覇気がなくなり、ゆっくりとその高度も落ちてくる。


「もう少しでしょうか……」


「そうだね……でもだからと言って油断しないでね。後一回くらい何かしてくれるでしょ」

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