第9話
リュート・フォン・レイブンクロー。
本人の戦闘能力は高いほうではあるものの異次元というほどでもないが、何か危険があると隕石が降ってきたりなど、普通はありえないようなことが連発して生き残る男であり、かつて僕が封印した特別な力をその身に宿す男である。
ゲームであれば間違いなく主人公であろう男がリュートである。
そんな男を見逃しておくのは危険だと判断した僕はサクッと彼を殺すことにしたのだ。
「見つけた」
リーナたちとともに魔族によって占拠された街を開放するためにやってきた街をうろついていたリュートの姿を僕は時空間魔法で発見する。
「やぁ……久しぶり」
「……ッ!?」
僕はリュートの命を完全に奪うため……彼の目の前に転移し、その心臓へと己の手を挿し込む。
「……ぁ?」
そのはずだった。
予兆なんてなかったのにも関わらず、いきなり地面が揺れ始める……前世で慣れ親しみ、この世界で初めて体験する地震だ。
予想外の衝撃に僕の体は一瞬止まり、その隙にリュートはゴロゴロと地面を転がって僕から距離を取る。
「お、おぉぉ?な、なんだ……今の、は?」
「……隕石か。本当に降ってくるんだな」
僕は困惑し、事態を把握しきれていないを無視して、遥か上空へと視線を向ける。
そこには僕の方へと高速で向かってくる隕石の姿がある。
……それだけじゃない。
この星全体が僕を殺さんと動き、荒れ狂い、襲いかかってくる。
「良いね……でも、星ごときが僕に勝てるとでも?」
僕は己のうちにある魔力を暴発させ、死霊魔法を起動する。
「『死ね』」
僕に囚われた哀れな死者の魂……それらが、ありとあらゆる物を自分たちの領域、冥界へと引きずり込もうと腕を伸ばす。
僕へと向かってくる隕石も、倒壊した建物も、大地より伸びてくる木も、そのすべてが灰となって消えていく。
「さようなら」
僕は死霊魔法ではなく直接リュートの心臓を貫くために一歩、足を前に出す。
その瞬間だった。
「ぐふっ!?」
僕の心臓が剣で貫かれたのは。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
剣を持ち、僕の心臓を貫いていたのはリンリーであった。
「や、やった……ッ!」
「……?」
気配がしなかった……僕を殺す、いや、リュートを生かすという世界の意思はこんんなことまで出来るのか。
「邪魔だ」
だが、この程度であればさしたる問題はない。
「え?」
僕はまるで心臓を貫かれ、力尽きるように前方へと倒れながら一歩、足を前に出す。
前に出した足を軸足として回転。
後ろ蹴り一つでリンリーの上半身と下半身を真っ二つにする。
「……ぁ」
「ふぅー、痛い……僕じゃなきゃ死んでいるよ。全く」
自分の心臓に刺さっている剣を抜き、軽く炎で己の体を炙って止血する。
「さて……と。リーナたちが来る前にさっさと終わらせちゃいますか」
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