第23話
帝都で開かれる帝王会議。
「な、何のことを言っているのか……理解出来ぬ」
その中で僕にベルコー二公爵家領で起きた未だ未解決の大量虐殺事件について問われたカラサラは動揺を滲ませながらもそう答える。
「我ら公爵家の権力は絶大的なものだ。しかし、その力は愛すべき領民より与えられる力だ。そんな民衆を無惨に殺す当主など、たとえ騎士爵であろうと公爵であろうとも許される者ではないと思わないかな?」
「えぇ……そうですね。領民を軽視する行いなど唾棄すべきものです」
「もう一度言うぞ。俺は何を言っているのか、わからないと言ったんだ」
「それは大問題だろう。ご自身の領地内で起きた最悪の事件を当主がわからないなど」
「……ッ」
僕の発言を聞き、カラサラが息を飲み、言葉が止まる。
「それは言葉の綾で────」
慌てて口を開いたカラサラの喋る言葉を……勢い良く開けられた扉の音が遮る。
「───スーシアッ!?!?」
扉を開け、中へと入ってきたのは完全武装のスーシア。
その後方には兵士の姿もある。
「って、何をしているのだッ!ここは帝王会議!平民たるお主が立っていい場所ではないッ!それに武装し、兵士を引き連れるだと!?前代未聞だッ!その行い、帝国に対する宣戦布告かッ!?」
カラサラは立ち上がり、怒りのままに言葉を叫ぶ。
「僕は許可しよう」
「私も許可致します」
だが、僕とリーナ嬢はその言葉に間髪入れず、そう宣言する。
公爵家当主二人の発言の影響は大きい……カラサラのスーシアを糾弾する発言など帳消しにするくらいに。
「ふむ。汝ら二人はそう話すか……であるならば、そこの娘の行為を例外的に認めよう」
それを聞いた皇帝陛下もスーシアの行いを容認する。
「なっ!?」
公爵家当主が二人に皇帝陛下の許可。
それを覆すことなど世界の誰であっても不可能である。
「父上。ご自身の罪を理解しておいでですね」
剣を持ち、多数の兵士を引き連れるスーシアはカラサラへと近づいていく。
「ベルコー二公爵家領で起きた未だ未解決の大量虐殺事件。それについて、知らないとは言わせませんよ」
「何が罪だッ!俺がやったとでも言うつもりかッ!」
「はい。そのつもりです。証拠もありますし、既に兄弟、姉妹の断罪は終わりました。ベルコー二公爵領は既に私の傘下にあります。もう……諦めましょう。自身の父の情けない姿など私は見たくない」
「ありえぬッ!冤罪だッ!!!」
カラサラは叫び、自身の無罪を主張する。
そして、皇帝陛下に訴えかけるように視線を向ける。
だが……無駄なのだ。
「みっともないな。カラサラよ」
「えぇ。大人しくしたらどうでしょうか?」
スーシアの行動を容認する発言を僕とリーナ嬢が行う。
「……ぁ……ぁ……ぁ」
僕とリーナ嬢の発言。
それはあまりにも重すぎる。
一連の会話を見れば誰であったもわかるであろう……既に僕とリーナ嬢とスーシアが組んでいる。
3つの公爵家領の連合。
それに対抗するなど皇帝陛下であっても不可能……カラサラは詰んだのだ。
そもそも僕たち三人が組んでいる時点でどうしようもないのだけど。
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