第15話
堂々と宣言し、カッコいいところを僕たちに見せつけるスーシア……そんな彼女から視線を外し、僕はリーナ嬢の方へと視線を向ける。
「そういえばさ。僕は周りから公爵家当主として接されることに嫌気がさして、なんとなく平民と偽っていたんだけど……なんでリーナ嬢は自分の正体を隠していたの?」
「え?待って?私の一大決心と共に告げられた言葉はもう興味の対象から消失しちゃったの?」
「そうですね……その理由は簡単です」
「え?無視なの……?」
僕の疑問を聞いて、リーナ嬢が口を開き、スーシアは無視される。
「私はあなたのことが大好きだからです」
僕の何気ない質問。
それに対するリーナ嬢の答えは決して何気ないものではなく、その衝撃はスーシアのことなんか軽く頭から弾き飛ばしてしまうほどの衝撃があった。
「え……?」
「私は幼少の頃からずっとあなたを愛しています。ずっとずっとずっと、好きで。それでもあなたには婚約者がいて、諦めるしかなくて。それでも諦められなくて……そしたらマリーナちゃんが実は魔王で、あなたがフリーになって……これはもうあなたの婚約者に私がなるしかないじゃないですか」
真っ直ぐ向けられるリーナ嬢の愛情。
「あなたに会うのは恥ずかしくて……どう接すれば良いかわからなくて……それでも私はあなたと話したくて、それであなたが平民になっていたから、私も平民になってみたの。いつもとはちょっとだけ違う私を演じて、話して……すっごく楽しかった」
「え……え?」
僕はそれを前にただ困惑することしかできない。
「そして、私は話している中でもっともっとあなたが好きになっていった……私は、アークが大好き。アークは私を、婚約者にしてくれますか?」
「えっ……」
リーナ嬢の言葉。
プロポーズであると言っても良いリーナ嬢の言葉に僕はたじろぐことしかできない。
「ご、ごめん……ちょっといきなりのこと過ぎて脳が追い付いてない。その返事は待ってほしい」
そんな僕はリーナ嬢にそう返すので精一杯だった。
■■■■■
「……え?なんかもうこれ私のこと些事になっていないか?」
自分の目の前で、自分が一世一代の大決心した直後に、甘々ラブコメ展開をされ、スーシアは悲しそうにぽつりと言葉を漏らした。
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