第16話
堕ちて……堕ちて、堕ちて、堕ちていく……。
既に私はすべての立場と金銭を失った。
「……」
光もなく、希望もなく、助けもなく。
私の隣にいた者は死んだ。私が慕っていた者は死んだ。
ただただ奈落の底へとどこまでも堕ちていく。
「……ぁ」
誰かが言っていた。
生きていれば希望がある。命さえあれば道は切り開かれる、と。
私は平民に堕ちた。
平民へと堕ちた私を誰も許さなかった。
何もかもがうまく行かなかった。
醜い貴族たちは容赦なく私を追い詰めた。
お金を稼ぐ手段なんてなかった。
私を助けてくれる人なんて誰もいなかった。
借金が増えていった。
きっと私はこのまま奴隷へと堕ち、性奴隷としてぼろ雑巾のように雑に扱われ、生涯を終えることになると思っていた。
「……あぁ」
私は信じられなかった。
その言葉が……でも、希望はあった。
今思えば、私が行っても意味などほとんどない学園にちょっとした制度を使って通うことにしたのは昔の知人が助けてくれることを望んだからだろう。
いずれにせよ、この世界に希望はあった。
私の友達であった二人の手が私の希望となった。
そんな……そんな……そんな私の希望は部屋の隅で、お互いが最も離れられる対角線上の部屋の隅でそれぞれ両膝を抱えて座り込み、がたがたと震えていた。
その二人の顔は壁の方に向いているため、私からは見えないが……多分、二人とも真っ赤になっていることだろう。
「ははは、私のことは些事なん?」
二人には感謝している。
別に私はマゾヒストというわけではないが、二人にからかわればがら過ごす日々も楽しかった。
こんな私の友達になってくれたの感謝している。
それでも、流石にこればかりは私も文句言っていいと思う。
「……一応私の人生で最大の決心だったんだけど」
平民に堕ちた元公爵家の人間が公爵家当主の座を目指すという話はそんな面白くないのかな……恋とはそんなに凄いものなのだろうか?
初恋すらまだな私は二人を見ながらそんなことを考えた。
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