第17話

 リーナ嬢の僕への告白。

 よくよく考えてみれば、誰かに告白されるなんて人生で初めてのことである。

 マリーナに関してはどちらかが告白したというわけではなく、親に決められた婚約者であり、そもそもマリーナは僕のことを愛してなど居なかったし、マリアだって僕の権力で強引に近づいたのが一番最初だ。

 僕主体ではなく、相手の方から好意を向けられたことなど初めてである。

 ……それ故に、リーナ嬢への告白に対してどうすれば良いかわからず、後回しにしてしまっていた。


「ほら、あーん」


「あ、あーん」

 

 そんな僕は献心的に尽くしてくれようとするリーナ嬢にたじろいでいた。


「……私の前でイチャつくのやめろよな。というか、なんでそこまでして未だ付き合っていないんだよ」

 

 お昼ごはんをあーんして食べさせてもらっている僕はスーシアの言葉に視線をそらす。


「……いや、その……ね?なんというか、ど、どうすれば良いのかわからなくて……」 

 

 元童貞の僕はどうすれば良いかわからない……。


「女に弱すぎだろ、こいつ。普通にハニトラで良いようにされるんじゃないか?」


「大丈夫ですよ。私、浮気は許しませんから。マリアさんと行為に及んだのは彼女が愛人であるからと納得しますが、相手がアーク様への愛もなしに近づくのを許しませんよ。いつも見ていますから」


「「え……?」」

 

 当然のように告げられるリーナ嬢のストーカー発言に僕もスーシアも固まる。


「ん?どうなさいましたか?」


「そ、それで、だ!私を公爵家につけるって話だったが結局どうするんだ?」

 

 不穏な空気を変えるようにスーシアが声を上げる。


「あ、あぁ……うん。それね。そのことなら問題ないよ。既に僕が裏から手を回しているし。商会の連中は既に味方に出来ているよ」


「私の方も順調ですね。確実に下から崩していけています」


「えっ……?私ってば何も知らないんだけど……?待って?私のすることちゃんとあるよな?」


「……あると思う?」


「……少しくらいはあるかと」


「だってよ!良かったな!」


「少し!?私が公爵家の当主になるって話なのに私の出番少しなの!?」


 僕たちは王族や公爵家の人間のみ入ることの許される個室の中で笑い合いながら昼食を取った……あ、あの。リーナさん。あーんはちょっと恥ずかしいんですが……あっ、逃げちゃ駄目、口を開けろ……なるほど。

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