第20話

 飛翔し、天空を駆け抜ける腐食したドラゴン。

 その背に乗せられている大量の爆薬……そんな危険なものを背負ったドラゴンは堕ちる。

 遥か天空より。


「……ぁ」

 

 天空の覇者が誰か?

 そんなもの決まっている。


「耳、塞ぎなさい」

 

 空を駆け抜ける天空の覇者たるドラゴンを止められるものなどいるはずもなく、腐敗したドラゴンは城へと突っ込む。


 次に起こるのは衝撃と振動。

 

 視界は白く閉ざされ、聴覚はその音を捉えきれない。

 

「……え?」

 

 しばし時が過ぎ。

 視界がもとに戻った頃。

 

 全員の視界に広がるのは魔王城を覆い尽くす大量の黒煙と砂塵。

 

 それが晴れたとき。

 そこには魔王城も、腐敗したドラゴンも。

 きれいさっぱりなくなっていた。


「な、なんだこれ……」


 スーシア・フォン・ベルコー二はその規格外の威力に驚愕し、体を震わせる。

 城を跡形もなく完全に破壊するなどどんな魔法を使っても不可能だろう。


「アークの残したものの一つ」


「……なるほど。アークのものね」

 

 だがしかし、アークのもの。

 そう言われればなんか納得出来てしまうほどにあの男は規格外であった。


「まぁ、今更あいつについて驚いている場合じゃないわ……そんなことより目下。重要なのは魔族を倒すことよ」

 

 魔王城があった場所。

 そこには魔法を使い、己の身を守ってたであろう数人が立っていた。


「あぁ……そうだな。が、見た感じ魔王もアークもいなさそうだな」


「……えぇ。そうね」

 

 スーシア・フォン・ベルコー二の言葉対して、スーシア・フォン・ラインハルトは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る