第19話
「さて……行くか」
前に立つのは二人のスーシア。
その後ろには沈んだ表情のリーナが、そしてその更に後ろには公爵家当主に付き従う世界よりすぐりの精鋭たちが。
「あっ、ちょっと待って」
「……なんだ?この後に及んで怖気づいたか?」
「いや、そんなわけないじゃない。ただ、魔王城へと襲いかかるのはあそこを更地にしてからよ」
「……更地に?そんな大魔法を撃って無駄にする魔力なんてないわよ?」
「魔力なんて使わないわよ。爆薬を使って完全に吹き飛ばしてやるのよ」
「……爆薬?」
「えぇ、そうよ。まぁ、見てなさい」
スーシア・フォン・ラインハルトは自分の腰につけているポーチより大量の爆薬を出していく。
「えっ……?で、出てきすぎじゃない?」
出てきた爆薬の量は彼女のつけているポーチの中に収まる量ではなかった。
「これはアークが作った魔道具だからね。無限に入るわよ」
「……やっぱりあいつこの世界に生まれたバグだろ」
「……間違いなくそうだと思うわ。あの子が人類陣営に居たときは人類優勢で、あの子が魔族陣営に居るときは魔族優勢。一人で情勢をぐちゃぐちゃにするのは辞めてほしいわね」
「……全くだ」
二人してアークの異常性に辟易としながら、スーシア・フォン・ラインハルトは大量の爆薬に加工を施していく。
「……これを簡単に爆発に出来るようにして……これを魔法で作った鳥で飛ばして落とす……」
スーシア・フォン・ラインハルト。
彼女もまた、死霊魔法を使うことが出来る。
ラインハルト公爵家の目指していた完璧な不死を完成させる真の死霊魔法ではないが、既に死んだ生命を死者として強引に動かす程度のことなら出来る。
「……は、はぁ?」
空より舞い降りた腐食したドラゴンを見て全員が驚愕し、唖然とする。
「死霊、魔法……?」
「そうよ。ラインハルト公爵家の人間であれば死体を動かすことくらいは出来るわ。蘇生とか、不死とかは出来ないんだけど……アークなら、出来るかもしれないけど」
「そ、そうなんだ……お、悍ましい一族」
「えぇ。そうよ。私たちの一族は世界で最も悍ましい一族よ。だからこそ、強いの。さて、と……じゃあ、吹き飛ばすわよ」
大量の爆薬を乗せた腐食せしドラゴンが空へと舞い上がり、魔王城へと向かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます